コロナで苦悩する世界の国々 スポーツ界にのしかかるこれからの「日常」 

2021年01月06日 12:30

スポーツ社会

コロナで苦悩する世界の国々 スポーツ界にのしかかるこれからの「日常」 
ブラジルのマナウスで遺体を運ぶ病院のスタッフ(AP) Photo By AP
 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】NFLのブラウンズは18年ぶりにプレーオフ進出を決めたが、就任1年目でチームを立て直したケビン・ステファンスキー監督(38)は10日に行われるスティーラーズとの1回戦で指揮を執れない。5日になって新型コロナウイルスへの感染が判明したためで、リーグ規定によって10日間は検疫が必要になったからだ。
 米国では大学を含めたフットボールとバスケットボール界が現在、シーズン中なのだが、多くのチームがコロナの感染拡大によって試合の延期や中止、さらに感染もしくは濃厚接触による離脱者が続出している。アイビーリーグのようにシーズンそのものを中止にしたカンファレンスもあり、スポーツ界への影響も深刻だ。

 NBAのサンズの本拠地はアリゾナ州フェニックスだが、同州では5日に253人がコロナの感染で死亡。7月30日の173人を大幅に上回る過去最多の死者数となった。NFLは2月7日にフロリダ州タンパでスポーツ界最大のイベントでもある「スーパーボウル」を開催するが、同州の感染者は8日連続で1万人以上を記録。陽性率は12%台となっており、すでに“お祭りムード”を引き出しの中にしまいこむ必要性に迫られている。

 日本も苦境に立たされている。しかし世界に目を向けると情勢はさらにきびしい。3度目のロックアウトとなった英国ではサッカー・プレミアクリーグで前週に選手とスタッフ併せて40人が感染。クリスマスから年明けにかけて多くの観光客を受け入れたメキシコでは、ソーシャル・ディスタンシングを遵守する生活様式もないことから入院患者が急増し、当局では今月の第3週までに医療体制が崩壊すると危機感を募らせている。

 AP通信によればブラジルでは各病院が冷凍用のトラックを遺体安置所として利用し始めた。集中治療室(ICU)で治療を受けている患者は8月以降で最多となっており、死者数の急増で遺体の処理が追いつかないからだ。亡くなった方の遺体安置所や埋葬場所がなくなってしまったのは南アフリカも同じ。埋葬場所どころか棺桶さえも不足し、日本では見られないような悲惨な光景が広がっているそうだ。

 フロリダ州では他の州同様にワクチン接種が始まっている。しかしドライブスルーの臨時の施設には接種を待つ車が列をなし、徹夜で待っている人たちもいるという。この危機から逃れるには多くの試練を乗り越え、かつて経験したことのない我慢と忍耐が必要。だからこそある意味、地域もしくは国家としての“チームワーク”が必要なのだが、日本にそれが備わっていることを信じたいと思う。

 世界におけるコロナの感染状況を日々チェックするのが私にとって「日常」となった。世界がこのような状況にある中でスポーツを論じることは無理がある。毎日、試合を見て記事を書いてはいるが、正直言えば「こんなことをやっていていいのか?」という迷いが常に脳裏をよぎる。

 ブラウンズのステファンスキー監督は本当に悔しいだろう。なんのためにここまで頑張ったのか…。言いたいことは山ほどあるはずだ。10日の試合では指揮官のその思いを感じながら原稿を書こう。スポーツが何かの役に立つことを信じながら…。

 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には7年連続で出場。還暦だった2018年の東京マラソンは4時間39分で完走。

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