コロナを巡る世界情勢とスポーツ界にのしかかる難題 国よって異なる選手の立ち位置
2021年03月17日 09:08
スポーツ社会
フロリダ州では2月5日を最後に、1日の感染者は1万人を超えることはなくなった。すでに全人口の11%に相当する243万人が2回のワクチン接種を終了。感染者数は徐々に減っていくと見られていた。確かにその通りになっているはいるが、16日の新規感染者は4791人。死者は101人を数えている。この1週間の平均感染者数は4527人。日本と少し状況が違うのは、ワクチンを接種開始から約3カ月が経過しても「下げ止まり」が続いていることだ。しかも検査での陽性率は5%以上で推移。東京が3%台なのに、それを上回っている。
同州南部のマイアミ一帯は陽性率が高いエリアだが、ビーチでマスクを着用せずに騒いでいた100人が当局に身柄を拘束された。1年以上、窮屈な生活を強いられている庶民にとって、開放感を味わいたいのはおそらく世界共通の願いだろう。ただ、その“欲望”が問題解決への糸口を徐々に狭め始めているような気がしてならない。
一方、アフリカのケニアでは15日に731人の感染が判明。1月18日には65人だったので実に11倍以上に膨れ上がっている。陽性率は13%台。ワクチン接種は医療従事者を中心にして始まっているがまだ9144人で、政府は外出禁止令の2カ月延長を決めた。
エチオピアでも1月22日に555人だった感染者が15日に1151人に急増。ワクチン接種の目標は「今年の終わりまでに国民の5分の1」なので、先の長い戦いを続けている。
ケニアとエチオピアといえば陸上・長距離界で多数の世界的なアスリートを擁している国。トップ選手の多くは国内ではなく欧州などに拠点を移しているとはいえ、五輪代表を決める選考会を国内で開催することは現時点ではきびしいものがある。では東京五輪に誰をどうやって送りこむのか?という問題、さらに感染者数が右肩上がりの国々から選手やスタッフをどうやって受け入れるのか?という問題、そしてこの両国の代表抜きとなっての開催となった場合、男女マラソンは果たして五輪の名にふさわしいのか?という問題…。数字を見ているとその問題解決への難しさがひしひしと伝わってくる。
パウロ・アンドレ・デ・オリベイラは21歳。2019年のユニバーシアード(イタリア・ナポリ)では陸上男子で100と200メートルとの短距離二冠を達成した将来が有望なスプリンターだ。しかし母国のブラジルは今、変異株(P1)を含む新型コロナウイルスのさらなる感染拡大に苦しんでいる。
ブラジルの16日の新規感染者数は6万8727人で2024人が死亡。日本とはまさにケタ違いの数字だ。人口1230万人のサンパウロでは670人が死亡。2分7秒に1人が命を落としているという悲惨な状況に陥っている。感染が社会問題となっていた当初から対策を打ってこなかったボルソナロ大統領は15日になって4人目の保健相交代という人事を行ったが、それが問題解決につながるとはとても思えない。
さてこの状況下、オリベイラを含むブラジルの五輪代表候補たちはどうやって練習を重ね、どうやって東京を目指せばいいのか?公表されているデータを参考にして目線を日本ではなくそれぞれの国に持っていくと、少し違った情景が目に映ってくる。
国際オリンピック委員会(IOC)にも東京五輪組織員会にも即効性のある解決方法などないだろう。過去に経験がないのだから、それを求めるのは無理な話だ。ただ決断を下すための情報収集だけはしっかりやってほしいと思う。パソコンの中で世界を一周してくると、国によって異なる選手たちの“立ち位置”が少しだけでもわかると思う。
東京では桜が開花。コロナの有無に関係なくまた季節が変わろうとしている。さてスポーツの未来はどこに向かおうとしているのだろうか?
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には7年連続で出場。還暦だった2018年の東京マラソンは4時間39分で完走。
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