IOCバッハ会長“VIP来日”緊急事態宣言下の東京で自分だけ「安全安心」五輪観戦へ
2021年07月09日 05:30
五輪
厳重な警備が敷かれる中、パトカーが先導。ホテル入り口でカメラのフラッシュを浴びると、車の窓を開けて笑顔で手を振ってみせた。感染防止力の高い「N95マスク」で口元を覆った優雅な“五輪貴族”。だが、果たしてどれだけの人が手を振り返しただろうか。
入国後3日間は隔離措置となるため、夜に開かれた大会組織委や政府、都などと観客数を決める5者協議はリモートで参加。「ようやく日本にやってきた!この日を1年以上、待ち望んだ。選手はみんなハッピー。安全な形で大会が行われることを喜んでいる」と、日本の状況を無視するように話し続けた。
来日が、4度目の緊急事態宣言発令が決定したこの日になったのは皮肉だ。バッハ氏は、以前から「宣言と五輪は関係ない」と述べ、日本の感染状況などお構いなしに「安全で安心な形で大会を開催する」と強調し続けてきた。このため、東京五輪は緊急事態宣言の中でも「安全安心」を標榜(ひょうぼう)する矛盾した大会となる。
無観客開催となることで、五輪を招致した国と東京都は深い傷を負う。都が当初、見込んでいた900億円に上るチケット収入は水の泡。4度目の緊急事態宣言で時短要請が予想される飲食業や観光業は、既に見送った海外からの観客だけでなく、国内客によるにぎわいも諦めることになる。五輪需要を見込んだ多額の投資も無駄になっており、ダメージは計り知れない。
一方、IOCのダメージはごくわずか。利益の9割が米放送大手NBCからの放映権料と企業のスポンサー料で、中でもNBCとは2014~32年の五輪で総額約120億3000万ドル(約1兆3000億円)の巨額契約を結んでいる。競技さえ行われれば、IOCにとって観客の有無は大きな問題ではない。
実際、開催都市にばく大な費用を負担させながら利益の大半を享受してきたIOCのトップであるバッハ氏は海外メディアから「ぼったくり男爵」と非難されているほどだ。
組織委によると、同氏は大会終了まで約1カ月、都内の最高級ホテルに滞在する。無観客でもIOCやスポンサー関係者ら“五輪ファミリー”は別枠で生観戦できる。その累計枠は大幅削減されたとはいえ、今も50万以上とされる。ボロボロに傷ついた東京で、彼らだけが「安全で安心な五輪」を堪能する。いったい何のための五輪なのか。根源的な疑問を抱え無観客五輪は2週間後に開幕する。
≪「大会成功のためまい進」5者協議発言要旨≫
グッドイブニングトーキョー!
今はもう呼び出しをかけられているアスリートのような気がする。ここに来て、態勢を整えて準備をしている。そして、これからアクションに臨む。
何百人というアスリートが日本に到着している。非常に厳しい措置が確立されている。この措置はみんなを、日本国民を守るため。成功裏に行われることを証明しております。
(小池都知事や橋本組織委会長のコメント後)
緊急事態宣言とはどういうことなのか、それが五輪・パラリンピックにどのようなインパクトをもたらすのか、うかがいたい。
どんな措置でも、安全な大会開催に必要なものは支持する。日本国民のためにいろいろな努力をしてきた。ワクチンプログラムは当初の予想をはるかに超える数値となっている。少なくとも選手団の85%以上が接種を済ませて来日する状況となっている。IOCのスタッフ、メンバーも100%に近い数字となって来日する。我々は皆さんの努力に貢献できると思っている。大会成功のためにまい進できる。
≪スポンサーから不満の声相次ぐ≫スポンサーからは不満の声が相次いだ。あるスポンサー関係者は「積極的なPR活動もしづらい」と、政府などの対応を批判。旅行大手KNT―CTホールディングスの米田昭正社長は方針決定に先立ち「観客が入るのが前提でスポンサーになった。損失につながる」と嘆いた。一方、製造業の関係者は「招待しても辞退する客が結構いて、出席を望んでいない雰囲気があった。戸惑いはない」とした。
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