東日本大震災から10年 楽天・早川「被災したからこそ」一投に込める「使命」

2021年03月06日 05:30

野球

東日本大震災から10年 楽天・早川「被災したからこそ」一投に込める「使命」
「3・11を忘れない」色紙を持つ楽天・早川(撮影・篠原 岳夫) Photo By スポニチ
 東日本大震災からまだ道半ばの復興。被害の大きかった東北唯一のプロ野球球団が、楽天だ。その一員として今季、加わったのがドラフト1位の早川隆久投手(22=早大)。地元は外房の千葉県横芝光町で実家も津波被害を受けた。運命に導かれるように被災球団でプロ生活をスタートした左腕。復興の象徴の一人であり、8年ぶりに復帰した田中将大投手(32)のようなエースへ。被災したからこそ背負う思いを胸に、プロ人生を歩きだす。
 不思議な縁を感じているからこそ「優勝したい」という願望ではなく、早川はあえて「使命」という言葉を使った。「東北で優勝することが自分の使命だと思っている。一人のプロ野球選手として元気や勇気を与えたい」。21年の3月11日は、東北の球団の一員として迎える。震災から10年の節目。早大時代の背番号は「10」、楽天では「21」を背負った。

 「年数がたつことで風化させてはいけない。忘れてはいけないし、体験した出来事として伝えていかなければいけない。自分自身も被災したからこそ、東北の人たちの気持ちが分かる部分もある」

 10年前は小学6年だった。実家は千葉県横芝光町。目の前は外房の海が広がっていた。3月11日午後2時46分。大きな揺れに襲われた。集団下校で家路を急ぐ途中、津波はすぐそこまで迫った。たまたま通りかかった、いとこの車で高台に避難。近くの防潮堤が決壊し、ほどなくして黒い波が自宅を襲った。

 今でも思い出すと胸が苦しくなる。母・優子さん(53)は「地震=津波。家族にとって過去のことでははく、現在進行形なんです。生きるか死ぬかの経験でしたから」と振り返る。母屋の1階の倉庫が水没。農機具や祖父・清亮さんが、早川のために、その春からの中学への通学用に買ってくれたばかりの新品の自転車もあった。同じ敷地内で祖母・春子さんが営んでいた民宿は床上浸水し、隣の家は全壊。当日の夜は家族で避難所だった体育館で一夜を過ごし、次の日は親戚の家に身を寄せた。

 「僕が野球をやっている姿をずっと楽しみにしてくれていた」

 祖父母が仕事を失うなど震災で生活は一変した。だが、早川の存在が家族にとって希望そのものだった。中学進学後に肘を剥離骨折した時は、春子さんが車で学校まで送迎。木更津総合では寮生活になり、顔を合わせる機会は減ったが、甲子園や神宮球場にも応援に駆けつけてくれた。実家に戻れば「何が食べたい?」と聞かれ、決まって好物の天ぷらをリクエストした。家族からサポートを受け、プロ野球選手という夢をかなえた。だが、大好きだった祖母・春子さんは、19年12月28日に他界した。

 昨年10月のドラフト会議。4球団から1位指名を受けた。楽天以外の3球団は在京球団だったが、同じ千葉県出身の石井一久GMがクジを引き当てた。運命に導かれるようにクリムゾンレッドのユニホームに袖を通すことになった。優子さんは仏壇の前で春子さんに「隆久は東北のチームに行ったんだよ」と報告した。

 13年の楽天のリーグ優勝と日本一は、早川家にとっても忘れられない出来事だった。「多くの人を勇気づける優勝だった。田中将大投手の姿は印象的でしたね。隆久もそういう存在になってくれれば」と優子さん。右腕の復帰とプロ入りが重なったのも何かの巡り合わせ。早川も伝説の投手の背中を追いかける。「素晴らしいお手本が身近にいる。自分もそういう選手になりたい」。被災地を勇気づける象徴になってみせる。節目の年。ずっと胸に抱く誓いを新たに、プロ1年目のシーズンに挑む。(重光 晋太郎)

 ◆早川 隆久(はやかわ・たかひさ)1998年(平10)7月6日生まれ、千葉県出身の22歳。上堺小1年からソフトボールを始め、横芝中では軟式野球部。木更津総合では2年春、3年春夏と3度甲子園出場。早大では1年春から六大学リーグ戦に登板し、4年秋は6勝、防御率0.39。通算成績は14勝12敗、防御率2.51。1メートル80、76キロ。左投げ左打ち。

 《11年の楽天》星野仙一監督の1年目。東日本大震災発生時は、兵庫・明石でオープン戦の真っ最中。選手には7回終了後に伝えられ、試合は打ち切られた。その後、チームは各地を転々としながら募金活動などを敢行。4月2日、6球場でプロ野球復興支援試合が行われ、札幌ドームで日本ハムと対戦。試合前には田中将大と斎藤佑樹が一つの募金箱を一緒に抱えて募金活動を行った。また、嶋(現ヤクルト)が「見せましょう、野球の底力を」とスピーチ。その5日後の同7日に初めて宮城県に戻り、そのまま被災地を慰問。12日のロッテとの開幕戦は嶋の勝ち越し3ランで勝利を飾ったが、最終的に66勝71敗7分け、勝率.482の5位でシーズンを終えた。
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