バッティングセンター店長でYouTuber、悩む野球少年を救う元プロ大原淳也さん

2021年09月03日 11:49

野球

バッティングセンター店長でYouTuber、悩む野球少年を救う元プロ大原淳也さん
元DeNAの大原淳也さんは第二の人生でマルチな活躍を続ける Photo By スポニチ
 プロほど基本を大切にする。元プロ野球DeNAの内野手、大原淳也さん(37)のYouTubeから、それが強く伝わる。アップされた動画には、投、打、守のイロハが満載。どれもこれも、多くの大人を、「こんな指導を子どもの時に受けたかった」と、思わせるものばかりだ。
 子どものフォームのどこに問題があるのか、たいていの大人は気付く。だが、改善方法を教えるのは難しい。教えられたとしても、アッパースイングなら、「上から振れ」と教えるような、起きている現象と反対の形を意識させる程度が一般的ではないだろうか。

 しかし、大原さんの動画は違う。その問題がなぜ起こるのか、どうすれば修正できるのかを、子どもでも理解できるような言葉や例えで説明する。表現も、「腕相撲のように」、「和太鼓を叩くように」といった感じで独特だ。プロ選手の技術分析も、的確でおもしろい。大原さんのひょうきんな人柄も表れたYouTubeチャンネル「大久保BC」は、小中学生とその親だけでなく、上のレベルを目指す選手にもプラスになる、基礎知識の宝庫だ。

 難しいことを易しく語れるのは、知識が深いからできる芸当だ。動画に興味を持ち、兵庫県明石市でバッティングセンターの店長をする大原さんを訪ねた。同じ施設で小中学生の野球スクールも開いている。当たり前だが、有料だ。小学生の守備教室を見学した。

 子どもたちが、「イチ、ニー」という声とともに、打球に合わせて右、左と足を出す。グラブの使い方、バウンドの合わせ方、打球に入るコースなどを意識しながら、緩いゴロを捕球する。体が覚えるように、何度も繰り返す。まず形づくりだ。「ミスはしていいんだよ。ミスをしてうまくなるんだ」。大原さんの明るい声が飛ぶ。

 次に少し速度を上げたノック。ここでも形を意識して取ることが求められる。仕上げに、エラーをすれば、軽い罰ゲームが待つノック。最後のメニューでは、取ること、アウトにすることに重きを置かれているようで、大原さんの技術的なアドバイスは少なくなり、子どもたちの気持ちが乗っていくような声かけが大半になった。自信なさげな子が、積極的に、楽しそうに、ノックを受ける。笑顔で罰ゲームをしていた。

 「プロは基本の姿勢に時間をかける。ノックは、その形を再現できるかどうかを確認する場。試合はゲームだから、駆け引きなどの別の要素が入ってくる」

 野球にまつわるAからZまで、立て板に水のごとく答える大原さんだが、プロ生活は芽が出ないまま幕を閉じた。佐賀学園、九州共立大、ヒタチエクスプレス、アークバリアドリームクラブ、四国アイランドリーグ香川を経て、26歳の10年に、ドラフト7位で指名された。ベイスターズ在籍はわずか2年。1軍出場は1試合のみだった。

 12年シーズン終了後に戦力外になり、独立リーグに活路を求めたものの、14年度をもって、プレーヤーに完全に別れを告げた。翌年、知人に誘われ、縁もゆかりもなかった明石市で、第二の人生をスタートさせた。

 苦労人の典型のように見える経歴は、セカンドキャリアを歩む今、「僕の強みになっている」と胸を張る。プロアマを問わずあらゆるカテゴリーでプレーし、多種多様な指導者と選手に接した。技術のメカニズム、首脳陣と選手の関係性、うまくいく選手とそうでない選手の考え方の違いなど、あらゆる事象を目に焼き付けてきた。

 守備力と巧打を買われて入ったプロでは、打撃フォーム改造に馴染めずなかった。その苦い経験さえも、財産としている。

 「僕は、指導者が求める技術を体で表現をできなかった。頭では理解できても、体で表現をできない。大人も子どもも、そんな選手が大半だと思う」

 どの指導者も目指すゴールは似ている。だが、理論や教え方は千差万別だ。大原さんは、自分が苦しんだ経験を踏まえ、「言い方、伝え方で選手は変わる」という信念のもと、表現、例えに工夫を凝らす。投打の理論も勉強し続けている。だから、あの分かりやすいYouTubeの動画が完成した。

 「大久保バッティングセンター」は、野球スクールも好評だ。教え子は、強豪高校に進む選手もいるが、ここの特徴は、生徒がエリートばかりではない点にある。小学生の守備教室に来ていた保護者に、お子さんが通うチームの事情を聞いた。

 「ウチの子はへただから、チーム内でいじめられて。指導者からも相手にされず、別のチームに移りました。うまくなって見返してやろうと、大原さんのスクールに来ています」

 別の方の声も、悲しくなる内容だった。

 「うまい子しか指導者に見てもらえないし、いいプレーをしても全然、誉めてもらえないんです。バントも多いですね」

 指導の第一義は、子どもの能力を伸ばすことであるはずなのに、勝利に重きを置かれるあまりに、体格差が大きい小学生の時点でふるいにかけられ、肩身の狭い思いをしている子がいる。大原さんのバッティングセンターは、「試合に出たい」、「活躍したい」と願う子どもたちの駆け込み寺になっている。

 「関西は野球が盛ん。その反面、試合に出られずに苦しんでいる子がたくさんいる。基礎を大事にしたら、もっと簡単にうまくなるのではないかと思う。今は活躍できていないかもしれないけど、そういう子がもっと輝けるようになれば」

 熱を込めて語る大原さんは、中学生の硬式チーム「兵庫大久保ボーイズ」でも監督を務める。「バッティングセンターの野球スクールの延長でできた」というこのチームは、元のチームの環境になじめなかった子や、野球をもう1度やりたいという子どもの受け入れ先になっている。大原さんに教えてもらいたくて入ったうまい選手もいる。

 チーム理念は「育成重視」。技術を教え、技術を高めさせる。ゴロを打つような打撃フォームは厳禁で、逆に長打の打ち方を教える。中3の最後の大会まで、基本的に犠牲バントやスクイズをしない。守備は、「1番輝くポジションを持たせながら」、いろいろな位置を練習させる。当然、厳しさもある。「育成」は技術だけを指すのではない。高校、さらにその先を見据え、野球人としての土台を教え込んでいる。

 どうすればうまくなるか。これまで、一般人がその知識を得ることが難しかったが、近年は違う。インターネットをつなげれば、無限にヒントが転がる。特に、大原さんの教えは、“野球の教科書”を求める子ども、親、指導者の支えになるだろう。ネットでも現実の世界でも、「大久保バッティングセンター」を訪ねれば、多くの発見が得られるはずだ。(記者コラム・倉世古 洋平) 
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