我が道_中畑清
【我が道】中畑清㉚ 70歳までにチャンスがあれば・・・
2022年05月31日 12:00
野球
鮮明に覚えている。5月10日の巨人戦(横浜)。3―10で迎えた7回裏、代打・多村仁志の左越え2ランなどで6点を返し、9回1死一、二塁から多村が今度は右翼席へ叩き込んだ。逆転サヨナラ3ラン。12―10とうっちゃった。
さらに8月20日の阪神戦(横浜)は0―7から9―8、同じく31日のヤクルト戦(神宮)は1―8から12―9。3度も7点差をひっくり返したんだよね。
3年目の14年は巨人に13勝11敗と勝ち越した。1年目は0勝9敗1分けと1勝もできなかった東京ドームで4勝4敗。やっと互角に戦えるようになった。
46勝85敗13分けで最下位に沈んだ1年目から2年目は64勝79敗1分けの5位、3年目は67勝75敗2分けの5位。高田繁GM、吉田孝司スカウト部長がいいドラフトを続けてくれたからね。チーム力は着実に上がっていった。
4年目の15年はグリエル(現アストロズ)の契約破棄という誤算もあったけど、心中覚悟で「4番&キャプテン」に指名した筒香嘉智、反対を押し切って抑えに抜てきしたルーキー山崎康晃らの活躍で一時は貯金を11まで伸ばした。
交流戦終盤から12連敗しながら球宴前の巨人3連戦(横浜)に3連勝して42勝42敗1分け、勝率5割ながら首位で前半戦ターン。南場智子オーナーから続投を要請された。
ありがたかったけど、まだ安定して戦える力はない。「成績次第で考えた方がいいんじゃないですか」と態度を保留した。案の定、中継ぎ投手陣が崩れて球宴明け4連敗。徐々に後退し、最終的には62勝80敗1分けに終わった。
優勝の期待を抱かせながら、終わってみれば3年ぶりの最下位。監督として責任を取るしかない。私の中で続投の条件はAクラスと線引きしていた。
順位はともかくある種の達成感はあった。シーズン中、マネジャーの前田浩継に「チケット2枚頼むわ」と言ったら「監督、なめてんじゃないですよ。チケットなんてありません」と言われた。完売しているんだ。
プロ野球は興行。お客さんに来てもらってこそ成り立つ。選手もファンに見られて成長する。筒香や山崎の成長はもちろんうれしかったけど、プロ野球の監督として一番の喜びはお客さんに来てもらえるようになったことだ。
面白い4年間だった。ユニホームを脱いで4年目になる今季、3度目の采配を振る原辰徳が巨人を首位に導いている。私にとって現役時代から常に特別な存在でいてくれた辰ちゃん。感謝している。
私は今年1月で65歳になった。前期高齢者だ。まだ体は動く。70歳までにチャンスがあれば、球界に恩返ししたいと思っている。