こだわり旬の旅
【長野・飯山】創業150年「水尾」蔵元が発信する新たな酒蔵ツーリズムとは…本格的利き酒体験も
2024年10月05日 15:00
社会
「日本酒の売り上げが減る中で何かしなければ、と考えていた時、かつて行った米国ナパバレーのワインツーリズムを思い出したんです。同じ酒蔵ツーリズムでもレベルが違う。参加者のほとんどがワインを買っていく。コレだ!と思いました」。そう話すのは北陸新幹線飯山駅から徒歩15分の田中屋酒造店の社長、田中隆太さん(59)。1873年(明治6)創業の酒蔵の6代目だ。
国税庁が酒蔵ツーリズム推進事業を始めたこともあり、「奥信濃ならではの地酒と地酒文化を発信しよう」と、代表銘柄「水尾」の名を付けた「水尾地酒ツーリズム」を発案。昨年11月から、入門編の「酒蔵見学&利き酒ツアー」、酒米「金紋錦」の水田をめぐる「バックグラウンドツアー」、酒造りを実際に体験する「蔵人体験ツアー」を開始した。
その中で1番人気という「酒蔵見学…」に参加してみたが、午後2時からのオリエンテーションの後、白衣をまとい酒蔵へ。意外に酒の匂いはしない。まずは麹作りのため熱々の蒸米を素手でひねりつぶす工程や蒸米に種麹をふって約24時間、寝かす麹室などを見学。最後の仕込みはすべて泡あり酵母によるもので、「ふくらみと香りのある酒ができる」と田中さん。階段を上った奥には、サッカー元日本代表の中田英寿さんも訪れた、酒の神様として崇拝されている京都の松尾大社の神棚があり参拝。思わず気持ちが引き締まる。
近くの野沢温泉村の水尾山(標高1044メートル)山麓に湧き出る天然水を使った水尾。途中、搾りたてと貯蔵中の試飲があるのは、この酒蔵見学ならではのもの。利き酒体験も本格的だ。水尾の特別純米酒、一味、辛口、壱八純米大吟醸の4種をそれぞれ野沢菜漬け、サバの水煮缶、自家製粕漬け、梅酒のうめとチーズという身近な食材でペアリングするのだが、「何度もテストした」(田中さん)というだけに、どの組み合わせもよくマッチ。それぞれの酒の旨味が引き立つ。おつまみを吟味してこそ酒がおいしくなることを痛感した。
約2時間のツアー終了後、金紋錦の水田を案内してもらったが、「ナパのブドウ畑でワインで乾杯していたのがうらやましくてね。冬にここで地元食材とのペアリングをやったんですよ。酒米の田んぼで完成品を味わうなんて最高じゃないですか」と田中さん。次回はバックグラウンドツアーに参加したくなった。
▽行かれる方へ 車は上信越道豊田飯山ICから約15分。参加料は「酒蔵見学…」が1人税込み5000円、「バック…」が同1万5000円、「蔵人…」が同2万円。問い合わせは田中屋酒造店=(電)0269(62)2057。