「絆大作戦」を体現した青学大の強さ
2021年01月05日 09:15
駅伝

ウイルスの脅威にさらされた昨春。スポーツに対する風当たりが強くなった中、常勝軍団も例外ではなかった。寮から走って相模原キャンパスのグラウンドに向かう部員に心ない声が飛ぶ。「マスクをしろ」「ここを走るな」。肩を落として帰ってくる選手たちに、美穂さんは原監督就任当時の弱小時代を連想した。「今までは外を走っていると“頑張って”って言われていたんですけど。久しぶりに弱かった時の、昔の青学陸上部の風景を思い出しました」。移動も練習の一環だったが、マスクを着用し自転車でグラウンドに向かう日々が続いた。
閉寮する大学もある中で青学大は通常通りの練習を行っていたからこそ、「誰か一人がかかったら」という恐怖心は強かった。美穂さんは選手たちの不安を汲み取り、寮内でのマスクは強要せずにあえて普段通りの寮生活を求めた。「家族だったらマスクはしないで話すし、寮ではそういう世間の声を感じさせたくなかったので」。その配慮に、選手一人一人が自覚ある行動を心掛けた。
チームの上下関係は元々それほど厳しくはないが、オンライン授業がメインだった今年は1年生が大学で友人をつくれない分、2年生と「同学年じゃないか」と思うほど仲が良いという。上級生は困難に直面したことで腹を割って話す機会が増え、横のつながりが強固になった。「一つの家として生活しているので、こいつらのために失敗できないとか、先輩を勝たせてあげたいとか。そういう気持ちが強くなってきたのかな。特に4年生同士の絆は他の年と比べたら強いと思う」と美穂さん。4位に終わった昨年11月の全日本大学駅伝の夜も、失速したエース・吉田圭太(4年)の部屋に4年生全員が集まっていたという。
箱根駅伝直前の12月下旬。精神的にも戦力的にも支柱だった神林の離脱はチームに動揺を与えた。当初は「ジョッグのレベルになっても良いから神林を走らせたい」という共通認識があったが、本人がそれを望まなかったことで、全員が「主将のために」という原動力に変えた。大会を終え、原監督が「200%じゃなくても150%成功できた」と語った“絆大作戦”。そこには家族の絆でコロナも苦境も乗り越えてきた今年のチームカラーが、色濃く反映されていた。(記者コラム・鳥原 有華)
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