阪南大高 今年こそ“大鉄魂”見せる 片岡監督「全員野球で」
2017年06月21日 12:42
野球
春5回、夏2回の甲子園出場を誇る名門校。昭和40〜50年代前半にかけては「大阪私学7強」の一角として、一時代を築いた。71年選抜では決勝で日大三に0―2で敗れたが準優勝。全国にその名をはせた。エース左腕・前田友行(元阪神)、強肩強打を誇った鍛治本明典のバッテリーを擁した77年には春夏連続出場。夏は3回戦の津久見戦で川端正が大会史上初となるサヨナラ満塁本塁打を放つなど、ベスト4へと進出した。だが、甲子園で躍動したのは、その夏が最後。86年には大鉄から阪南大高へ改称した。
その後も何度か聖地へ近づいたことはあった。97年秋は大阪大会を制したが、近畿大会初戦で敗れた。2015年秋には大阪大会準優勝で近畿大会に出場。初戦で奈良大付を破ったが、準々決勝で龍谷大平安にコールド負けし選抜出場を逃した。昨秋の大阪大会は4回戦、今春は3回戦で姿を消したが、星川、山下の2枚看板と主将で遊撃の泉を中心とした守りのチームで巻き返しを図る。片岡監督は言う。
「今年のチームも力がないわけではないのですが、実力を発揮し切れていない。そういう意味で、この夏は監督の采配が重要になると思います」
11年秋に就任した片岡監督は、自らを鼓舞するように言葉をつないだ。主将を務めた76年夏は決勝でPL学園に敗れて準優勝。強打の三塁手としてもチームをけん引したが、甲子園出場はならなかった。法大でも三塁手として活躍し、4年時には主将。社会人の名門・東芝に進み、5年間の現役生活を送った。
「東芝では補欠でした。ベンチで過ごすことが多かったですが、そのベンチ内もすごい緊張感だった。勝つことに対しての緊張感というんでしょうか。凄く良い経験をさせてもらったと思います」
トレーニングコーチを退いた後は野球部を離れ、社業に専念していた。野球との関わりは、シニアチームで指導する程度…。だが、人生は分からない。母校・阪南大高から監督就任要請があったのは、関連会社に出向し、定年退職まで残り数年というタイミングだった。
「もちろん、うれしかったです。何より母校のために、どんな形でも良いから貢献したかったので。ただ、社内からは反対もされましたし、葛藤もありました。上司にも恵まれていましたから…」
決断を後押ししたのは、古豪復活にかける思いでしかない。低迷する母校のために、力になりたい―。千葉県内の自宅に妻を残し、大阪へ戻ることを決意した。50歳半ばにしての単身赴任。そんな不自由な生活も苦にならないのは、四六時中、チームのことを考えているからだ。
「自分が優勝監督になりたいとは、これっぽちも思いません。ただただ“こいつらを勝たせてやりたい”という思いだけ。それだけなんです。伝統あるこの学校に来て“良かった”と思って、卒業していってほしい」
伝統を継承する一方で、野球部のスタイルは自身の現役時代と大きく変えた。部員数はさほど変わらないが、当時のメンバー外は野球部のグラウンドから離れ、大和川の河川敷で練習していた。それが今では、グループをいくつかに分けて全員練習。公式戦のメンバー人選も、極力3年生を優先する。
「片岡は甘い…という声も耳に入ってくることもありますが、全員野球が僕のモットーです」
史上初となる2度目の春夏連覇を狙う大阪桐蔭、選抜準優勝の履正社、今春近畿大会4強で古豪復活をかける大体大浪商、同近畿大会準優勝の東海大仰星など、今夏も大阪は熾烈な争いが待ち受ける。甲子園への道のりは決して簡単ではないが、それでも勝機はある、と片岡監督は力強く言い切る。
「大阪桐蔭、履正社をはじめ強いチームは確かに強いと感じますが、野球は何が起こるか分かりません。前のチームも秋の準決勝で履正社に勝つことができたし、今の3年生は実際にその試合を見ているわけです。そういう経験は、今のチームにとっても貴重な財産となっています」
15年秋は大阪大会準決勝で寺島(現ヤクルト)擁する履正社に1―0。13年夏も4回戦で敗れたとはいえ、大阪桐蔭に3―4と食い下がった。監督して迎える6度目の夏。まずは初戦の堺戦(13日・住之江)で渾身のタクトを振るう。
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