野球という仕事 柳田悠岐にフルスイングの概念が芽生えた瞬間
2017年12月12日 09:00
野球
そんなとき、柳田は声をかける。「いいスイングだ」。空振りしてヘコんだ子に笑顔を分け与える。
「ティー打撃っていうのはね、バットを最短距離で出してボールの内側を叩くんだ。一番大事なのはフォロースルーを大きくすること」
柳田の言葉に子供たちは目を輝かせ、うなずいた。
神奈川県川崎市。アンダーアーマーが主催するベースボールクリニック。DeNAの山崎康晃と参加し、地元球団の人気守護神をしのぐ歓声を集めた。
どうすればあんなに凄いフルスイングが出来ますか?
そう質問された柳田が語ったのは、代名詞となったフルスイングの原点だった。
広島の小学生時代、練習中に必ずみんなで素振りをさせられた。「これ意味あんの?」。誰かが言い出した。誰も答えなんて分からない。柳田にも分からない。
「意味は分からない。でも、どうせ振るなら誰よりも速く振ってみようと思ったんだ。しんどいけど。そうしたらヘッドスピードが上がった。それからバッティングが変ったんだ」
素振りは毎日やり続けた。その積み重ねが柳田のフルスイングを作り上げた。
「思い切り振るのが自分。三振も凡打もアウトはアウトでしょう。打球が遠くに飛べば面白いしね。野球が楽しいというのが原点だね」
プロで頭角を現し始めた柳田の背中を王貞治(ソフトバンク球団会長)が、小久保裕紀が「練習では1センチでも遠くに飛ばせ!」と、押した。
クリニックの開催日、大谷翔平の大リーグ・エンゼルス入団が発表された。「僕は大谷選手を打者として見てしまう。同じリーグでやっていたからバッティングの凄さが分かる。(メジャーでも)特大ホームランを見たい」。誰よりも思い切ったスイングで、誰よりも遠くまで打球を飛ばす。柳田と限りなく高い場所で競い合ってきたのが大谷だったのだろう。
最大のライバルは海を渡ってしまった。特大ホームランを見たい。それは、ずっと争っていたいという願いだ。
最後に来季の目標を聞かれた柳田は言った。
「あいつエグいな、と言われるえげつない数字を狙いたい」
何本打ちたいとか、比較対象がある数値より、むしろ「えげつない」という抽象的な表現が似合う。それが柳田というプレーヤーの本質なのだ。(専門委員)
◆君島 圭介(きみしま・けいすけ)1968年6月29日、福島県生まれ。東京五輪男子マラソン銅メダリストの円谷幸吉は高校の大先輩。学生時代からスポーツ紙で原稿運びのアルバイトを始め、スポーツ報道との関わりは四半世紀を超える。現在はプロ野球遊軍記者。サッカー、ボクシング、マリンスポーツなど広い取材経験が宝。
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