今オフ助っ人豊作の要因は…移籍市場のスロー化+若手優先の球団編成=大物来日急増!

2019年12月25日 09:15

野球

今オフ助っ人豊作の要因は…移籍市場のスロー化+若手優先の球団編成=大物来日急増!
オリックス入団が決まり、福良GM(左)と握手を交わすアダム・ジョーンズ(球団提供) Photo By 提供写真
 【スポニチBALL PARK 】 今オフは外国人選手獲得の動向が、日本球界全体で大きな変化を見せている。オリックス入りしたアダム・ジョーンズ外野手(34=ダイヤモンドバックス)を筆頭に、メジャーで実績のある30代半ばの選手が続々と来日。また、阪神は球団史上最多となる8人態勢を整えるなど、昨年の同時期の19人と比べて28人と数も増えている。「質」「量」ともに充実した助っ人補強の内幕を、各球団の証言をもとに探った。(プロ野球取材班)
 例年を上回る豊作ぶりだ。かつても「バリバリ」の大リーガーが来日したケースはあったが、多くても年に2、3人程度。今オフはメジャーで実績のある選手が、相次いで海を渡る決断を下した。

 1つ目のキーワードは、メジャーの移籍市場の変化。超大物の移籍決定が近年スローになっており、中堅以下の選手についてはどうしても後回しになる。通算1312安打のジェラルド・パーラ外野手(32=ナショナルズ)を獲得した巨人の大塚淳弘球団副代表編成担当は「早く(選手が所属先を)決めたいんじゃないのかなと思う。(市場の動向が)厳しくなっているのでは」と話した。

 パーラは今季途中に移籍したナ軍でワールドシリーズ制覇に貢献。11、13年にはゴールドグラブ賞にも輝いた実力者だ。しかし、昨オフは2月中旬まで契約がまとまらず、最終的にはジャイアンツとのマイナー契約を受け入れた。

 ソフトバンクの三笠杉彦GMも「最近はMLBのFA市場が遅くなっている。世界中の優秀な選手がそろっているMLBの選手が、日本も選択肢に入れるようになったということ。(獲得の)チャンスがあるから、見ていかないといけない」と証言。今オフはヤクルトの保留者名簿から外れたバレンティンを獲得しただけでなく、メジャー通算54勝左腕で、13年にはレイズのエースとして17勝を挙げたマット・ムーア投手(30=タイガースからFA)の獲得が決定的となっている。

 市場を変化させた要因は、米球団の編成方針だ。かつてのヤンキースの注目株で、メジャー通算33本塁打のタイラー・オースティン内野手(28=ブルワーズ)はDeNAに入団。同球団の壁谷周介チーム戦略部長は「メジャーの若返りが進み、30歳を超えて契約がもらえない選手が増えてきつつある。前は早くて27、28歳だったが、今は25、26歳くらいでも来るようになった」と語った。

 若返りの背景にあるのは、解析システム「スタットキャスト」などによるデータ分析の進化。これが第2のキーワードになる。データ分析により、同程度のパフォーマンスが見込まれる選手なら、中堅よりも伸びしろがあり、マイナーとの入れ替えもしやすい若手を重用する傾向が高まっている。ロッテの松本尚樹球団本部長は「20代後半でも扱いが落ちるし、30歳を過ぎて一線でプレーは相当な実績がないとできない。少し前なら(今季途中加入の)マーティンも獲得できなかったと思う」とした。

 若いうちに来日するメリットは、引退間近の選手よりも活躍が期待できるだけではない。壁谷戦略部長は「マイコラス(巨人→カージナルス)など出戻りで活躍する例が増え、メジャーでなかなか活躍できないなら自分を磨いて戻るということも選択肢になったと思う」と話した。再びメジャーで輝くためのステップに、というモチベーションになる。

 阪神で今季58試合に登板して防御率1・38と活躍した救援右腕ジョンソンは退団し、この日パドレスとの2年契約合意が米メディアで報じられた。「今後もそういう選手が日本に来るかは、新しく入ってきた選手たちの活躍次第のところもあると思う」と三笠GM。活躍すれば1、2年でメジャーに戻っても、新たな実績のある選手が来日するという、ウィンウィンのサイクルが続くことになる。

 【奥田秀樹通信員の目】今月の9~12日に行われたウインターミーティング中に入ってきたジョーンズのオリックス入りのニュースは、メジャー関係者の間では驚きではなかった。30代の中堅選手たちの市場価値は下降し、交渉も後回し。「日本はないのか」という声があちこちから聞こえていたからだ。昨オフの交渉が難航したパーラは、早い段階からアプローチした巨人入りを選択。メジャーの中堅選手は仕事を失う恐怖にさらされている。
 かつては30球団のどこかが手を挙げてくれると信じてオファーを待つことができたが、今はそうではない。昔なら、ベテラン監督が経験を買って「こういう選手はクラブハウスに必要だから獲得してほしい」と推して決まることがあった。だが、今は分析が得意なGMがデータを頼りに決めていくのだ。
 日本の球団は、これまでは原則、年内に開幕前の外国人補強を済ませてきたと思うが、辛抱強く待つ余地があると思う。2月1日のキャンプ初日に合流させるならビザの手続きもあり、1月10日までには決める必要もあるが、近年は1月中旬以降に良い選手がたくさん残っている。しかもみんな契約を焦っているから、日本からの話を真剣に検討する。積極的に調査し、試すべきだろう。

 《五輪控え人数多め オリ・ジョーンズは米国代表入りも可能に》獲得選手の数が増えた一因は、来年行われる東京五輪の影響だ。バレンティンを獲得したソフトバンクは、デスパイネ、グラシアル、モイネロのキューバ勢が五輪出場権を懸けた米大陸予選(3月22~26日)に参加見込み。現時点で阪神、広島と並んで最多の外国人選手8人を抱え、三笠GMは「レギュラーがフル出場することを想定して編成しない方がいい」と話している。また、メジャー40人枠の選手は五輪に出られないが、日本移籍により、ジョーンズは米国代表としての出場の可能性を米メディアが報道。オリックスは体調が問題なければ容認する方針を示している。

 《苦手交流戦対策 阪神、球団最多8人》球団史上最多の助っ人8人態勢で臨む阪神は、谷本修球団本部長が狙いの一つに交流戦対策を挙げた。「交流戦は結構、順位に影響する。チーム全体の力としてちょっとパ・リーグに及んでいなかった。新しい外国人が獲れたことで改善しないかと期待は持っています」と説明。通訳も増員し、春季キャンプではOBで駐米スカウトのアンディ・シーツ氏とジェフ・ウィリアムス氏が訪問して適応をサポートする。

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