日本ハム・佑 再起への新概念「投げるリハビリ」、キャンプ連日200球「時代と逆行」もメリット
2021年03月09日 06:45
野球
「肘のことだけ考えたら凄く順調。今のところ不安はない」
表情には充実感さえあった。PRP療法による治療を始めたのが昨年11月。MRI(磁気共鳴画像装置)でじん帯の状態を確認しながら、1月にキャッチボールを開始。キャンプからマウンドで投げた。治療開始から2カ月ほどでのブルペン投球。過去の野球界では、考えられないプログラムだ。「手術していたら今頃はボールも握れていない。ここまで投げられるということは、僕が言うことではないかもしれないけど、奇跡に近い」。それが本音だった。
昨年、斎藤が受けた診断はじん帯断裂。手術を受け、休んで回復を待ち、リハビリを始めるのが一般的だ。通常は復帰まで1年はかかる。だが昨季、プロ10年目で初めて1軍登板がなかった斎藤に、その時間はなかった。情報を集め、さまざまな人の話を聞き、この治療法を知った。科学的根拠に基づいた治療法であり「僕にはこれしかなかった」と迷わなかった。
投げることがリハビリ――。「じん帯はある程度の負荷をかけないと再生しない」とし、キャンプでの投球は全て治療の一環だった。出力を抑えて球数を投げることで、じん帯に負荷をかける。キャンプ序盤に100~110キロだった球速を終盤は130キロ弱まで上げ、すでに変化球も投げている。
このプログラムには2つのメリットがある。一つは「投げられない」というストレスがないこと。もう一つは、投げられることで、リハビリしながらフォーム修正が可能になる。現在は肘、肩に負担がかからないフォームに取り組んでおり「いい感じできている」と手応えを感じている。
プロ野球でこのプログラムに取り組むのは初めてのケース。「リハビリとしては今の時代に逆行してますよね」。そう言った斎藤は、こうも続けた。「シーズン通して投げ切る肘の状態を保てるようになったら、画期的なこと。リハビリの新しい概念になると思います」。誰も進んだことのないリハビリの道の先に、復活のマウンドは間違いなくある。
▽PRP(Platelet Rich Plasma=自己多血小板血しょう注入)療法 患部の血液を採取し、血小板を増やす培養を施したものを注射して自然治癒力を促進させる。皮膚のしわ、たるみなどを解消する形成外科の分野から発展した。大リーグではトミー・ジョン手術を受ける前にこの療法を選択するケースが多い。
【肘のじん帯損傷からPRP(多血小板血しょう)注射を受け保存療法で復帰した主な投手】
☆斎藤隆 ドジャース時代の08年に右肘を痛め、大リーグ投手として初めてPRP療法を選択。レッドソックスに移籍した翌09年に復活した。
☆田中将大 ヤンキース1年目の14年7月8日のインディアンス戦後に右肘のじん帯部分損傷で離脱。PRP注射を受けてリハビリを重ね、同年9月21日のブルージェイズ戦で復帰した。
☆山口鉄也 7年連続60試合以上登板していた14年のオフに左肘の不調を訴え、10月末にPRP注射を打った。翌15年も60試合、16年も63試合に投げて9年連続60試合登板を果たした。
【取材後記】斎藤を取材したのは2軍キャンプ打ち上げ前日の2月25日。このキャンプ最後のブルペン投球で、179球を投げた後だった。かなり出力を上げたように見えたラスト9球。「腕、振れてました?」と逆取材されたが、確かに振れていたと思う。
その表情に深刻さはない。斎藤は「こう言ったら怒られるかもしれないけど、充実感はありますね」とも言った。まだリハビリの段階。本来ならじん帯断裂のリハビリで充実感など得られないが、投げられることが投手の心の負担を軽くしている。それがこのプログラムの利点だろう。
「ユニホームを着せてもらい、野球をやる時間と場所を与えてもらって、本当に幸せです」。リハビリでも野球をやる喜びを得られる。再起へのモチベーションも高い。その先にあるのは、17年以来の1軍公式戦での白星だと信じたい。(遊軍・秋村 誠人)
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