仰木彬対野村克也、95年日本シリーズ知る新井宏昌氏が今回を分析 「投手が警戒すべきは杉本と山田」
2021年11月17日 08:00
野球
「相手からすれば、彼を抑えないと勝てないのは当然。ただ予告通り内角高めには来ましたが、ボール球が多かった。イチローはどんな球もバットの芯に当てるし、何よりも相手投手に負けたくないタイプ。“そこに投げて来るなら打ってやる”となる。(球との)距離を取って打ち返すのが難しいところに投げ込んできたし、ヤクルトからすれば、作戦は大成功でしたね」
結果的にイチローが19打数5安打に封じられた。だが新井氏はそれ以前の問題だと指摘する。
「古田、オマリーは首位打者を獲得したことがあるし、池山、ミューレンは長打力がある。そこに飯田、土橋ら個性的な選手が加わり、凄い打線でした。こちらはシーズンで3割を打っていたのはイチローだけ。相手打線の実績を見れば、戦う前から分が悪いのは明らかでした」
さらに“普段着野球”ができなかったことも大きかった。
「予告先発を最大限に利用して戦ってきたチーム。シーズンでは相性の良さを考えて打線を組み、何とか少ないチャンスをモノにしてきましたが、シリーズは予告先発ではありませんでした。なのでオーソドックスなオーダーにしましたが、機能しなかった。初対戦はそれなりに投げられれば、投手が有利。投手戦になるのは予測していましたが、想定以上に打てなかった」
5戦のうち、3戦が延長戦。全ての試合で3点差以内の接戦となったが、勝ち切る勝負強さがなかった。
同年1月17日に発生した阪神大震災。「がんばろう神戸」の合言葉のもと、被災地・神戸の希望となるため、チームは全力でシーズンを戦い抜いた。
「野球どころではない状況から始まって、神戸の皆さんの後押しもあって勝つことができました。実力以上のモノを出したことで、やりきった感もあったかも知れない」
敗戦の経験をナインは翌年の日本一へと確実につなげた。
仰木彬、野村克也両氏のもとで現役生活を過ごした中嶋、高津両監督の対決。新井氏自身も両氏と浅からぬ因縁がある。当時、選手兼任監督だった野村氏の強い推薦で、74年ドラフト2位で南海に入団。仰木監督からも技術、観察眼を買われ、現役時代から新外国人候補の評価を聞かれていたという。
「今は昔と違って、交流戦もあるし、選手の特徴もある程度は分かっています。昔は手探りですから。その中でも投手陣はオリックス、打線はヤクルトが若干、上だと思います。投手と捕手の違いはありますが、両監督とも1点差を逃げ切ることの重要性、難しさを熟知しているから接戦になると思います」
仰木監督と中嶋監督の共通点を感じるシーンがあった。「CSの第3戦。9回無死一塁から安達、小田の連続バスターで同点に追いついて日本シリーズ進出を決めた」場面だ。
「最初からバスターだったのか、相手がチャージしてきたらバスターだったのか、サインは分かりません。ただ、出されたサインを選手が躊躇(ちゅうちょ)なく実行し、高い確率で成功させる。これは相当、練習し、言っておかないとできない。仰木さんの時も少しでも相手の隙を突く野球で、選手は自信を持ってサインを実行していました。そういう野球ができる土台を整えたのが素晴らしい」
対決の構図は26年前の「個人対チーム」ではない。「オリックス先発陣とヤクルト打線」と位置付ける。
「投手が最も警戒すべき打者はオリックスは杉本、ヤクルトなら山田でしょう。オリックスで最も信頼できる打者は吉田正。彼を終えた後に投手としては、少しの隙が生まれる余地がある。逆にヤクルトは一番、長打力のある村上を警戒するあまり、前の打者に隙が生まれやすい」
勝敗、優勝チームは予想しない。88年の近鉄現役時代の「10・19」や翌年の日本シリーズ3連勝4連敗などを経験をしてきた新井氏なりの思いがある。
「厳しい試合を、多くの選手に経験して欲しい。将来、指導者になる選手も多い。後輩に伝えていくことで、球界も発展する」
名勝負の系譜が脈々と受け継がれていくことを望んでやまない。
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