ソフトバンク・ドラ1風間球打 世代最速157キロ右腕育てた父お手製の「虎の穴」
2021年12月30日 05:30
野球
![ソフトバンク・ドラ1風間球打 世代最速157キロ右腕育てた父お手製の「虎の穴」](/baseball/news/2021/12/30/jpeg/20211230s00001173128000p_view.webp)
風間の野球歴には空白の1年半がある。事件は小学5年の10月に起きた。所属していた「塩山南スポーツ少年団」の練習がない日は自宅で父と打撃練習やブルペン投球の特訓を行うのが約束だった。まだ、そこまで野球に対する熱を持っていなかった当時の風間。練習をやりたくない日は、父が仕事から帰る前に風呂に入ってしまうことで“もう汗はかけない”とアピールして特訓を回避した。だが3度目に父の堪忍袋の緒が切れる。「もう野球をやめろ!」とカミナリを落とされ、泣きながらチームの監督に退部の連絡を入れた。
野球から離れたまま中学入学が間近となり、風間は未練を抱えながらも「Jリーグを目指そう」と新たにサッカーの道を模索しようとした。だがその時に父から「もう一度、野球をやってみろ」と言われた。野球の才能を誰よりも認めている父から息子に与えられたラストチャンスだ。再び握った白球。「今度は絶対に離さない」と誓い、必死になった。
類いまれな身体能力と天性のセンスを持っていた風間。野球にしっかりと向き合えば、急激な成長曲線を描くのは当然だった。中学時代に「やるならトップレベルまで行きたい」とプロになることを決意。高校は故郷を離れて強豪のノースアジア大明桜に進んだ。もうプロは夢ではなく、具体的な目標となり、学年ごとに細かく目標を設定。甲子園出場や世代最速の157キロ計測と次々にクリアした。野球への熱意が少なかった小学生時代の「やらされる野球」ではなく「自ら考えて動く野球」でドラフト1位の夢も実現。愛情を込め、我が子を強制的に野球から遠ざけた父の行動がなければ、今の風間はなかった。
日が沈み、たき火の前で「オリックスの山本投手のような5冠王が目標」と決意を語った風間は「活躍して将来的には父と母に外車をプレゼントしたい」と続けた。汗と涙が染み込む「虎の穴」は、いつでも初心に戻れる場所。家族の思いも背負い、いよいよプロの世界へと飛び込む。
◇風間 球打(かざま・きゅうた)2003年(平15)10月11日生まれ、山梨県甲州市出身の18歳。小1から野球を始め、塩山中では笛吹ボーイズでプレー。ノースアジア大明桜では1年春からベンチ入り。今夏の秋田大会で世代最速の157キロを計測。甲子園では2回戦で明徳義塾に敗れた。ソフトバンクでの背番号は「1」。憧れの選手はエンゼルス・大谷。1メートル84、84キロ。右投げ左打ち。
≪4兄弟全員に球の字≫野球一家の風間4兄弟は全員が名前に「球」の字が入る。長男・球道さんは山梨学院で内野手、次男の球星さんは甲府工で捕手でプレーし、末っ子の中学生・球志良さんも野球をしている。「4人の中で一番上に立つという気持ちが自分にとって良かった」と風間は感謝する。11日にペイペイドームで行われたファンフェスティバルの自己紹介では「どんだけ~」とIKKOのモノマネを披露するも、帰省後に2人の兄からは「何やってんだ」と辛口評価。「やらかしたなと思いました」と苦笑いした。
≪裏家訓「肉・肉・マヨネーズ」で肉体づくり≫潜入取材の最後、記者は風間家の庭で行われたバーベキューに参加し、焼き肉をごちそうになった。隣に座った風間は、どんぶりいっぱいに盛った米に焼き肉を乗せ、「キユーピーマヨネーズ」をたっぷりかけてペロリ。思わず「こ、これが“肉・肉・マヨネーズ”か!」と声が出た。健康診断の結果が気になりだした31歳の記者も挑戦。確かに食が進んだ。
家訓は「礼儀・謙虚・感謝」だが、実は裏の家訓もある。それが「肉・肉・マヨネーズ」。食でも強じんな肉体をつくり上げるためだ。中学時まで過ごした実家の食卓には毎日、唐揚げなどの肉料理が並び、調味料は4兄弟そろってマヨネーズ。風間が出場した今夏の甲子園大会の期間中にスポニチ本紙が裏家訓を報じると、キユーピー東北支店の北東北営業所の担当者が「これは応援しないといけない」と感謝の意味も込め段ボール箱いっぱいの商品を野球部に差し入れた。
現在、風間は記者と同じ体重84キロだが「高校の卒業式までに6キロ増の90キロを目指します」と宣言。マヨネーズが、増量の鍵を握る。
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