×

日本ハム新球場 大林組が国内初の試みとなる寒冷地での開閉式屋根下での天然芝管理を1000日検証

2022年10月05日 20:07

野球

日本ハム新球場 大林組が国内初の試みとなる寒冷地での開閉式屋根下での天然芝管理を1000日検証
「ミニチュア球場」で芝の状態を確認する大林組・十河氏(撮影・清藤 駿太) Photo By スポニチ
 来年3月に開業する日本ハムの新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」に3日から天然芝が運び込まれた。新球場の設計施工を担う大手ゼネコン・大林組の十河潔司主席技師(54)を中心に、国内初の試みとなる寒冷地での開閉式屋根下での天然芝管理維持方法を検証。さまざまなミッションをクリアしてきた怒濤(どとう)の「1000日間」を十河氏に聞いた。(取材・構成 清藤 駿太)
 19年10月から3年間、新球場の横で寒冷地での天然芝管理維持方法の検証が行われてきた。新球場の30分の1サイズ。方角やスタンドの位置、日当たりなど同条件で設置された6棟の「ミニチュア球場」も役割を終え、解体が近づいている。

 「生まれたての赤ちゃんをずっと面倒見てきたみたいなものなので。寂しいですね」

 積雪と切っても切り離せない北海道に誕生する、国内初の開閉式屋根の天然芝球場。3月のオープン戦からの稼働を想定すれば、冬季は屋根を閉め、雪を避けて過ごすことになる。雪の下で芝を休眠させて管理維持するゴルフ場のような方法はとれない。前例のないミッションだった。

 「僕も初めてトライするということで不安が80%。ドキドキしながら始めたんですけど、維持管理の方法のメドはついた」

 軌道に乗せたい1年目の冬は、第一条件の「越冬」のクリアに腐心した。グローライト(人工ライト)と地温コントロールをフル活用し、芝生を育てた。

 「初年度は潤沢な条件で試験をしたので予想通り。これで育たなければ、お手上げだったので。ホッとしましたね」

 第二条件は「コスト」。ライトと地温で芝が育つことは分かったが、膨大なランニングコストがかかる。芝を育てつつ、コストも下げられるラインを3年間かけて見極めた。

 「(実験施設は)1~6棟で数字が大きいほど成育環境が良くなる。ライトの照射時間の短長、時期、肥料など6パターンで3年間見て、落としどころを見つけた」

 第三条件は「耐久性」。越冬、コストをクリアしても芝が弱ければ意味がない。そこでホームゲームの試合数と同様に、年70回ほど芝の上でスパイクで足踏みやダッシュを実施。大柄な外国人選手も想定し、体重100キロの作業員も参加してダメージ具合を調べた。

 「芝が強ければ強いほど傷のでき方が少ない。そこは検証できた。芝の見た目は一緒でも硬さ、柔らかさ、根っこの張り具合は違っているので」

 十河氏は03年から15年間、J1神戸の本拠地「ノエビアスタジアム神戸」の天然芝管理維持に携わった。当初は02年サッカーW杯会場としての使用を終え、開閉式屋根に改修したばかり。屋根下でのノウハウを積み重ねてきた。

 「屋根下での芝の管理は、経験したことがない人がやると失敗する。水、肥料の条件もそう。特に病気が発生しやすいので、お医者さん的なこともしなくてはいけない。早期発見で処理を施すにはかなりのノウハウが必要。神戸での経験がここでかなり生かされた」

 今週末に芝張り作業を終え、来月にはお披露目される予定。今後は球団、グラウンドキーパーと連携を取りながら芝を管理していく。

 「ホッとした部分はあるが、またアジャストしていかないといけないところはいっぱいある。また、新たな挑戦が始まるというところですね」


 ○…新球場の天然芝は「ケンタッキーブルーグラス」という種類の寒地型芝が使用されている。楽天の本拠地「楽天生命パーク」でも使用されており、種をまいてから育つまで時間はかかるが、一度育てば擦り切れに強い芝となる。阪神の本拠地「甲子園」や広島の本拠地「マツダスタジアム」で使用される暖地型芝は秋以降に茶色に変わって枯れるが、寒地型芝は一年中緑色。色も濃く、鮮やかなゼブラ模様をつくりだすことができるという。

おすすめテーマ

2022年10月05日のニュース

特集

野球のランキング

【楽天】オススメアイテム