判定による大混乱 仙台育英・須江航監督が異例の伝令で収拾「大人が公正に」 元NPB審判員記者が解説
2022年10月25日 11:53
野球
11年から16年までNPB審判員を務めた記者が(1)状況(2)下した判定(3)1度目の判定訂正(4)2度目の判定訂正(5)事態が収拾できた理由(6)求められるアンパイアリング、の6点から「ジャッジ」を解説する。
(1)状況
仙台育英6―3東北 7回表 仙台育英の攻撃 無死満塁 左打者が一塁手の前へ「ノーバウンド」か「ワンバウンド」か、際どいライナーを放った。
(2)下した判定
一塁手が捕球した打球に対し、一塁塁審は「キャッチ(アウト)」を宣告したが、ワンバウンドで捕球したと思った一塁手は本塁へ送球。本塁を踏んだ捕手は一塁へ送球した。守備側の東北は「3―2―3」の併殺で2死二、三塁と考えていた。だが、打球に対して「キャッチ」と判定した審判団の見解は異なった。協議した審判団は場内放送で「(打球を)ライナーと判定しました。これでワンアウト。その後に一塁ランナーに対するアピールアウトがありましたので2アウト。三塁ランナーはホームインをしていますので1点となります」と説明した。これに対して東北側は伝令を通して何度も疑義を申し出た。
(3)1度目の判定訂正
再度協議を行った審判団は2度目の場内放送を行った。「打者が一塁へ打ちました。先ほどアウトの判定をすると言いました。しかし、判定を変更させていただきます。一塁手がホームへ転送いたしました。これで三塁からのランナーをアウトにします。これで1アウト。その後キャッチャーが一塁へ転送しました。これでバッターランナーがアウトになりますので2アウト。元の一塁にいた走者が二塁へ行きましたので二塁。元の二塁にいた走者がホームインしていますので、点数は1点を認めて2死二塁で試合を再開いたします」
打球に対しての判定を「キャッチ」から「ノーキャッチ」に変更したものの、二塁走者の生還を認めて1点とした裁定に対して、納得のいかない東北から疑義申し立ては続いた。
(4)2度目の判定訂正
再び協議した審判団は2度目の判定訂正を行い、場内放送をした。「打者が一塁へ打ちました。その時、一塁手が落としたと判定いたします。その一塁手がホームへ転送しました。その時点で三塁走者がアウトになります。その後、キャッチャーから一塁に転送しました。バッターランナーがアウト。残っていたランナーはダイレクトキャッチと思って戻ったので一、二塁にいました。ですので点数はありません。2死一、二塁で再開します」
判定を「ノーキャッチ」に変更した上で、「無得点」としたことで東北からの疑義申し立ては終わり、試合再開となった。
(5)事態が収拾できた理由
2度の判定変更で不利益をこうむった仙台育英が判定変更を受け入れたため事態は収拾した。試合後の取材では判定変更受け入れ以上の「譲歩」も明らかになった。
なんと、仙台育英の須江航監督は伝令を通して「僕たちもワンバウンドだと思う」と審判団に伝えていた。自チームが不利になる前代未聞の伝令を須江監督はこう振り返った。
「やっぱり甲子園を懸けた試合はフェアじゃなくちゃいけない。コロナとか理不尽なことで(選手は)いろいろものを奪われてきた。公正にできることは大人がしてあげないといけない。審判の方がジャッジを改めたということは素晴らしいことだと思います」
勝利すれば東北大会制覇で来春の選抜出場の可能性は「濃厚」から「確実」になる。それでも指揮官は勝ち負け以上に大切なものを伝えたかったのだ。
(6)求められるアンパイアリング
ミスはどのカテゴリーの審判員にも起こる。記者もNPB審判員時代は何度も何度もミスを犯した。大切なのはミスをしても最善の状況に近づける努力をすること。その点、粘り強く落としどころを協議した審判団の働きは評価したい。
審判技術の点から考えると「オープン・グラブ・ポリシー」の徹底ができれば最初から「ノーキャッチ」の判定が下せたかもしれない。「オープン・グラブ・ポリシー」とはグラブが向いている方向の審判員が打球の判定を下すというもの。今回、一塁手が捕球したグラブは本塁側を向いていた。正面から見ていた球審がジャッジを下せば「ノーキャッチ」の判定を下せる可能性は高まっただろう。
ボランティアで審判を担当しているアマチュア野球の審判員には本当に頭が下がる。休日をつぶしてまでグラウンドに立っているのは野球界、選手のためを思ってのことだろう。記者のNPB審判員時代は、毎晩のようにあった飲み会の席で先輩からトラブル談を聞いて「自分ならばどのように対処するか」と考えた。全国の審判員の「トラブルシューティング」のために、今回の「騒動」をここに記しておく。(アマチュア野球担当・柳内 遼平)
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