ピッチクロックが野球選手の健康維持に役立つ!?その根拠とは

2023年02月02日 12:48

野球

 大リーグ公式サイトのアンソニー・カストロビンス記者が1日(日本時間2日)ピッチクロックが野球選手の健康維持に役立つ可能性について報じている。
 野球はアメリカンフットボールやバスケットボールといった他のプロスポーツとは違って時間制ではないため、試合がいつ終わるかわからない。雨の日もしばしば止むまで待つし、移動が多い。ゆえに睡眠時間は不規則だ。22年6月のフィリーズは13日間に14試合を消化した時期があった。ミルウォーキーで4時間のデーゲームを戦った後、空路フィラデルフィアに戻り、時差で1時間減った中、翌日のナイトゲームは3時間24分。その次の日はデーゲームだった。そして最後の4試合は本拠地でのナショナルズ戦だったのだが、50時間の間に4試合全て消化している。

 ガーディアンズのクリス・アントネッティ編成本部長は「睡眠の専門家にはいつ寝て、いつ起きてと睡眠時間の安定をアドバイスされるが、プロスポーツでは不可能」と話している。データベースに基づいたバンダービルト大の研究によると、遠征の疲労の蓄積、不規則な睡眠の連続で野手のストライクゾーンの見極めが悪くなっていたそうだ。さらに他の研究でも、安定した睡眠と、プロで長くプレーできるかどうかには相関関係があり、高校生でも睡眠時間8時間以下の選手はケガの確率が上がるといったことが報告されている。

 23年から大リーグで導入されるピッチクロックは、昨季マイナーで試合時間を平均で25分も短くした。導入前は投げるテンポを速く強いることで、ケガが増えると危惧されたが、実際にはケガは前年よりも11%減った。むしろ健康維持に役立つと若手選手が歓迎した。「手ごろな時間で試合が終わり、睡眠もしっかり取れる。身体のリカバリーの面で大きな影響を与える」と言う。ナイトゲームを終えて、ホテルに戻る時刻が午後11時半と、午前12時半では違うし、就寝時間も変わってくる。プロ野球では、長いシーズンそれが毎日続く。「何年プロでプレーできるかにも影響が出てくる」と指摘する。

 マイク・トラウトは大リーグで12年間プレーしてきたが、その期間のMLBの平均試合時間は3時間5分だった。185分のうち半分の92・5分はセンターの守備位置に立っていたことになる。トラウトがよく比較される元ヤンキースのスラッガー、ミッキー・マントル(51年から68年までプレー)の最初の12年間、MLBの平均試合時間は2時間28分。マントルがセンターの守備位置にいたのは74分で、トラウトとの差は1試合あたり18・5分になる。トラウトも「その差は年数を重ねればどんどん大きくなる」と気付いている。31歳のトラウトは近年、肘、ふくらはぎ、手、足の付け根、腰、足など、身体のいろんな箇所でケガをしている。

 1981年から2001年までプレーしたカル・リプケンJrは2632試合連続出場の偉大な記録を作ったが、近年大リーグで1シーズン、162試合全部に出る選手は珍しい。21年はマーカス・セミエン、ウィット・メリーフィールド、22年はダンスビー・スワンソン、マット・オルソンとそれぞれ2人だけだった。ケガが増えていることに加え、首脳陣が無理をさせないようにしているからだ。結果、せっかくチケットを買って球場に来たファンがお目当ての選手を見られないということが起こる。ピッチクロックが問題を全て解決できるわけではないが、健康維持に役立つ可能性は高い。関係者は「プロ野球選手は毎晩同じように眠ることはできない。でも可能な限り安定させることで、リカバリーやエネルギーのレベルを上げるのに大きな助けになる」とカストロビンス記者に説明している。

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