V12へ死角なし…山中慎介“神の左”を生む強じんな下半身
2017年01月19日 10:40
格闘技
「走りにボクシングのスタイルが出ますね」。山中が涼しい顔で解説した。12ラウンドを戦い抜くように一定のペースをキープした自身と対照的に、走り込みキャンプ初参加の日本スーパーフェザー級王者・尾川堅一(28)は1周目を6分38秒で走ったかと思えば、次の周回は8分30秒。インターバル走でも最初は若さを生かして飛び出すが、急激に失速する。「試合の時もそうだけど、ちょっとムラがある」というジムの先輩の指摘に、尾川は「疲労がたまっても筋力があればペースは保てる。慎介さんは下半身が大きくなっているイメージ。自分は上半身の力だけで倒していて、下半身の切れがまだない」と苦笑した。
山中の沖縄キャンプは5回目。タイム更新については「(前回来た)夏と冬ではかなり気候に差があるので」と気にとめていなかったが、「長い坂では粘れているのが分かる。疲れても上体が起きていない。気持ちだけではできないから、肉体的にも強くなっている」と話すように、足腰の強化にはハッキリと手応えをつかんでいる。下半身に粘りが出れば、試合の後半になっても体が浮くことなく「下半身に常に力が入っている状態」のまま、力強い踏み込みから“神の左”と呼ばれる左ストレートを打てる。「自分はスタイル的には下半身のボクシング。上半身で打つタイプではないので」とのコメントにプライドが感じ取れた。
約6年間、山中の体を見ている中村正彦トレーナーは、キャンプ最後のクロカンを見届けたあと「慎介はこの5年間で一番いい」と状態に太鼓判を押した。昨年9月のアンセルモ・モレノ(パナマ)との再戦に7回TKO勝ちし、11度目の防衛に成功。春に予定する12度目の防衛戦をクリアすれば、具志堅用高が持つ13回連続防衛の国内記録に王手がかかる。「数字には本当に興味がないんですよ」と言う山中だが、地味ながら凄みを感じさせたキャンプの走りからは、負ける姿を想像することができなかった。(記者コラム・中出 健太郎)