統一戦の前にやるべきこと――田口、V6戦へ
2017年06月24日 10:30
格闘技
地味な扱いをされるのは、ジムに内山高志(元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者)という偉大な先輩がいて、その周囲に控える立場だったこともある。だが、世界的に評価の高い挑戦者を相手に、インパクトがある戦いを見せていないことも理由だろう。王座を奪取した14年12月のアルベルト・ロセル(ペルー)戦は2度ダウンを奪う見事な戦いぶりだったが、判定まで粘られた。防衛戦は指名試合が宮崎亮(井岡)との日本人対決で、しかも宮崎の出来が悪く、他の挑戦者はおしなべてランキングが低かった。3位のカルロス・カニサレス(ベネズエラ)を迎えた前戦も引き分け防衛で、強さを誇示できなかった。
評価を変えるには、本人同士が熱望しているWBO世界ライトフライ級王者・田中恒成(畑中)との統一戦に勝つことが分かりやすい。V6戦の発表会見でも「いい内容で勝って、田中選手と統一戦をやりたい。勝てば次にやれるものと思っている」と希望を口にし、「(田中は)成長していて、ミニマム級の頃より強くなっている。そんな選手に勝てたら、自分のボクシング人生は成功だと思う」とまで言い切った。実は、13年4月に決定戦で日本ライトフライ級王座を獲得した際にも、試合前に「王者になったら次は井上尚弥(大橋)とやるかも」と打診されていたそうで(初防衛戦で井上に判定負けして陥落)、「今回はそれに近いものがある。それ(1つ先の試合)がモチベーションになったりする」と明かした。
個人的には、統一戦に進む前にバレラ戦でインパクトを残すべきと考えるし、田口にとってベストバウトになる可能性があるとも期待している。従来の1年に3度防衛戦のペースではなく、前戦から6カ月以上空いて体はリフレッシュできており、調整に苦労する冬の試合でもなくコンディションは良いはず。前戦で下げた評価を取り戻す&次戦で統一戦の可能性など、モチベーションにも事欠かない。
指名挑戦者のバレラは大物との対戦経験はないが、田口が引き分けたカニサレスに判定負けした1敗のみのランキング1位。「劣勢をはね返してKO勝ちする勝負強さがある」と田口は評しており、望むような打撃戦になりそうだ。田中も5月に全勝のアンヘル・アコスタ(プエルトリコ)を退けて指名試合をクリアしたばかり。お互いの評価が高まったところで激突すれば、統一戦は「ライトフライ級最強決定戦」の価値を帯びる。 (専門委員)
◆中出 健太郎(なかで・けんたろう) 2月に50代へ突入。スポニチ入社後はラグビー、サッカー、ボクシング、陸上などを担当。田口は遊軍時代に世界王座を奪取した試合を執筆し、ボクシング担当復帰後も取材を継続。テレビ局が田口につけた愛称「ツヨカワイイ」は、30歳を超えたボクサーにはふさわしくないと思うし、本人も嫌がっている節があるので、新たなニックネームがつけられることを期待している。