クーラーの下で汗をかく――夏、世界戦前
2017年08月14日 12:06
格闘技
一方で、疲労のピークで調子が最悪だった試合1カ月前に「あえてやっておくべき」と10ラウンドのスパーリングを敢行。好戦的な挑戦者ルイス・ネリ(メキシコ)対策として、接近戦で打ち合うキツい内容にした。大和トレーナーは「そういう練習も試練の場と思ってやっておかないと。結果的には良かった」という。合理的な取り組みを軸に、非効率的に思える練習も加え、最終的には効果が見込めるようにバランスを取った形だ。
今や健康管理の意識が高まり、昔は考えられなかったクーラーをつけての練習も珍しくはない。寝る時に冷房をかける選手も増えている。就寝中に汗をかきすぎて疲れをためるより、しっかり体を休めた方がいいとの考えだ。26日にWBO世界スーパーウエルター級王座決定戦(米カリフォルニア州)に臨む亀海喜寛(帝拳)も、より良いパフォーマンスへの最適解を求めるタイプで「キツい練習をするために、いかに快適な環境にできるか」とジムに自分の扇風機を持ち込んだ。「世界戦でなければ認められなかった」という、クーラーをつけての練習も許可された。扇風機の風を受けながら、サンドバッグを30秒間ひたすら連打する、根性が必要なメニューを消化している。
「根性」が代名詞だったファイティング原田氏は過酷な減量の最中、トイレの水も飲みたくなったというエピソードが有名だ。だが、帝拳ジムの浜田剛史代表は「渡辺二郎さんが“原田さんの頃と違って、今はどこにでも自動販売機がある”と話していた」と振り返った。元々ないものは諦められても、そこにあるものを我慢する方が苦しいというわけだ。さらに生活が便利になり、“逃げ場”も増えた現代は、自らを追い込むのにも工夫がいる。「今の時代、バンタム級の体重をずっと維持し続けるのは普通、できないよ」。山中と自身の防衛記録との比較を問われた具志堅用高氏はそう答えたが、謙遜でも何でもなく、現状を把握した上で感心していたのだった。 (専門委員)
◆中出 健太郎(なかで・けんたろう) 2月に50代へ突入。スポニチ入社後はラグビー、サッカー、ボクシング、陸上などを担当。2001年世界陸上(エドモントン)では、男子400メートル障害で為末大が47秒台の日本新記録を出して銅メダルを獲得。準決勝後、サブトラックにいるコーチに話を聞くため、走り終えたばかりの為末に声をかけて呼んできてもらったのはいい思い出。決勝は当然、記者席で声を出して応援しました。