日本王座新設の女子プロボクシング 男子のオマケ感覚捨てて本腰を
2017年09月29日 09:30
格闘技
2007年にJBCが女子プロボクシングを正式に公認して以降、タイトルは世界王座と東洋太平洋王座(09年創設)の2種類しかなかった。日本王座を争うほどの選手層が国内になく、ランキングもつくれなかったからだ。だが、JBCによると、16年度の国内女子選手数は139人。公認から10年を経過しても人数は伸び悩んでおり、男女を通じ日本人初の4階級制覇を達成した藤岡奈穂子(42=竹原慎二&畑山隆則)ら女子ボクシングを引っ張ってきた選手の高齢化も進んでいる。選手層の薄さから同じ相手と何度も対戦したり、実力不足のアジア人選手との試合も目立つなど、マッチメークにも苦労がうかがえる。そこへ日本王座が創設されれば興行が活性化し、ベルトを身近に感じた選手のモチベーションアップや底辺拡大にもつながるとの狙いだ。
日本タイトルマッチが恒常的に行われれば、女子の興行も組みやすくなるだろう。「世界」「東洋太平洋」はちょっと遠いと思っている女子ボクサーにも刺激となり、競技への意欲を高める可能性は高い。ただし、それだけで女子ボクシングが劇的に活性化するとも思えない。一般に分かりやすくアピールするためには、世界との戦い=世界タイトルマッチの充実は欠かせない。現状は国内での日本人対決が多すぎて日本タイトルマッチと変わらないし、強い外国人が相手になると敵地へ行かされ、地元判定に泣くケースも多い。最近の総合格闘技での女子選手の活躍を見るにつけ、トップ選手のレベルアップや優れた人材のリクルートとともに、華やかな舞台を用意するだけの本気のプロモート、マッチメークが必要と感じる。
男子プロにとってボクシングは仕事だが、女子選手からは「好きなので続けている」という声がよく聞かれる。そんな選手たちが気兼ねなく練習に取り組めるような環境も、現状では十分とは言えない。真の活性化を図りたいのなら、女子は男子のオマケという感覚を捨て、業界全体がもっと本腰を入れないと選手層は厚くならない。せっかく創設された日本タイトルマッチも、関係者以外に注目されないまま開催される状況になってしまったら、もったいない限りだ。(専門委員・中出 健太郎)