自身のメンタルをもコントロール 村田諒太の“王者の言葉”

2018年04月20日 09:32

格闘技

自身のメンタルをもコントロール 村田諒太の“王者の言葉”
村田諒太 Photo By スポニチ
 春は出会いの季節。4月1日付でスポーツ部に異動となり、ボクシング担当になった記者にも新たな出会いがあった。わずか3日間で4人の世界王者と会い、2週間で4回戦から日本タイトル、東洋太平洋タイトル、そして世界戦まで約100試合を観戦。数多くのプロボクサーとの出会いに恵まれ、その1人目が村田諒太(32=帝拳)だった
 言わずと知れたWBA世界ミドル級王者。15日のダブル世界戦では、難しいと言われる初防衛戦で8回TKO勝利を収めた。駆け出しの分際で世界王者を語るのはおこがましいが、「ボクシング=あしたのジョー」的な化石のような概念しか持っていない昭和30年代生まれの記者にとって、その出会いは実に新鮮だった。

 豊富なボクシング知識と高い分析力を持ち、物事を客観視、俯瞰(ふかん)する能力の持ち主は現在のボクシング界でも異質と言える存在。元WBC世界スーパーライト級王者で、帝拳ジム代表の浜田剛史氏は「(現役として)やっている最中に自分で自分を分析する選手はあまりいない。大抵のボクサーは自分が一番強いと思っているし、相手のことは下に見る。でも、村田は相手の良さもちゃんと認める」と教えてくれた。

 3度目の取材の時、思い切って村田に一つ質問をぶつけてみた。恥をさらすことになるので詳細は伏せるが、他社の記者たちの反応からすると的外れな質問だったようだ。それでも彼はきちんと答えてくれた。そこは人柄の良さなのだろう。ただ、その流れからヴィクトール・フランクル著「夜と霧」の話題になるとは驚かされた。

 無論、ボクサーだって一人の人間。リングを離れれば、読書もすればテレビや映画も見るだろう。2児の父でもある村田は時に“パパの顔”を見せてくれることもある。それでもナチスの強制収容所での体験に基づいた書籍とボクシングを結びつける発想は、凡人の記者にとっては想定外だった。

 試合当日が近づくにつれ、口数は減ると思っていたが、報道陣に対する姿勢は変わらなかった。そして試合後も。世界王者としての使命感、報道陣やその先にいるファンへのサービスの意味もあるのだろう。さらに自身の考えや思いを言葉として出発することで自分のメンタルをコントロールしようとする意図も見えた。初防衛戦に向け、何度も口にした。「欲や邪念を、いかに抑えるか」。村田にとって言葉を発することも勝利に近づくための“手段”だったのかもしれない。

 今後は米ラスベガスでの防衛戦や東京ドームで3団体統一王者ゴロフキン(カザフスタン)と対戦する構想もあり、また取材機会はあるはず。その時には“王者の言葉”を正しく伝えられる記者でありたい。(大内 辰祐)

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