比嘉が「無期限」で拳四朗が「3カ月」のワケ JBCのライセンス停止処分はなぜ期間が違うのか
2020年12月18日 09:00
格闘技
プロボクシングを統括するJBCは、これまでも競技と関係しないことであっても刑事事件として起訴されたり、有罪判決を受けた場合には厳しい処分を下している。しかし、今回の拳四朗は起訴どころか、逮捕事実もない。防犯カメラの映像から他人のマンション敷地内に立ち入ったことは間違いないようだが、示談が成立したために逮捕を免れたという訳でもない。週刊誌報道がなければ、JBCとしては知ることもなかった出来事だった。もちろんバレなければ良いということではないが、警察や司法によって詳細かつ正確な事実が明らかにされていない状況での処分は、JBCとしても難しかったのではないか。とは言え、現役王者の不祥事が発覚した以上、看過することはできず、倫理委員会を経て「プロボクシングの社会的信用を著しく棄損した」として処分に至った。
3カ月という期間は短いと受けられるかもしれないが、拳四朗は昨年12月から試合ができておらず、ライセンス停止期間を長くすれば、選手生命にも影響するかもしれない。制裁金を高額にする一方でライセンス停止期間を短くすることでバランスをとったのだろう。仮に白紙となった久田哲也(ハラダ)との防衛戦が再設定されるとすれば、久田にも早くチャンスが巡ってくることになる。
JBCが定めるルールは競技の安全性、公平性などを担保することを目的に定められており、決して処罰するために存在する訳ではない。もちろん、ルールを破れば、罰はあるが、それは他のスポーツでも同じ。現状のJBCルールには批判もあるようだが、様々な制約は基本的にはボクサーを守ることに主眼を置いている。比嘉のケースにしても、今回の拳四朗のケースにしても、実はJBCのスタンスに違いはなく、彼らにとって最善の選択をした結果が「期間」に表れただけなのである。拳四朗に対し、通算48時間以上200時間以内の社会貢献活動を義務付けたことは「信頼を少しでも回復してほしい」という“親心”だったとさえ思える。
刑事事件にならなかったとは言え、酒に酔って他人の自動車を傷つけるという行為は確かに許されることではない。ただ、報道が間違ったイメージを与え、必要以上の批判を集める結果になったことも否めない。報道に携わる者として自分自身も襟を正さなければと思っている。(記者コラム・大内 辰祐)