井上尚弥「右でも左でも当たれば倒せる」 ダスマリナス戦は4団体統一へのステップ
2021年05月14日 15:00
格闘技
井上「ケガで試合ができなかったオマール・ナルバエス(アルゼンチン)戦後の1年は長く感じたけれど、今回はずっとトレーニングはできているので割と早いなという感じですね」
――この間、WBOWBO王者のジョンリエル・カシメロ(フィリピン)が盛んに井上選手を挑発していますが、気になりますか。
井上「気にはなるけれどダスマリナスとの試合が決まっているので、いまはカシメロのことは考えていません。僕は4団体の王座を統一したいのであって、カシメロに興味があるわけではないので。でも、タイミングが合えば決着をつけるときが来ると思うので、そのときはパンチを当てさせずにフィニッシュに持っていきたいと思っています」
――今回はモロニー戦と同じラスベガスでの試合ですが、前回は無観客、今度は観客を入れての試合になりそうです。
井上「そこがイメージできないんですよね。日本とラスベガスでどんな盛り上がりの違いがあるんだろうって。お客さんの熱によって自分のテンションの上がり方が変わってくるので、そのあたりが未知といえば未知です」
――初めて世界王座を獲得してから7年が経ちましたね。
井上「あっという間といえばあっという間だけれど、じゃあこの7年間で何ができたのかと考えると物足りなさが残りますね。特にスーパー・フライ級時代には7回防衛したけれど、納得できるような感じがないんです」
――バンタム級ではイメージどおりですか。
井上「いや、イメージしていた以上です。バンタム級での初戦がジェイミー・マクドネル(イギリス)で、次がWBSSの初戦でファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)。エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)、ノニト・ドネア(フィリピン)、そしてモロニー。スーパー・フライ級時代と比べると、すごく充実しています」
――いまはバンタム級が一番フィットしますか。
井上「そうですね、一番フィットしていると思います。でも少しずつ体重がきつくなってきているのも事実なので、今年、来年と様子を見ながら遠からずスーパー・バンタム級に上げる日が来るかも。ただ、無理して階級を上げようとは思いません。(体重が)適正じゃないと意味がないと思っているので」
――この7年で成長したと感じる部分はどのあたりですか。
井上「精神的にもそうですが、自分が試合でやらなくちゃいけない技術であったりメンタルの持って行き方であったり、そういう点が少しずつ成長してきて、それがいまの階級で生きてきているのかなと思います」
――今回のダスマリナス戦ですが、王座を返上して別の相手と対戦することは考えなかったのでしょうか。
井上「4団体の王座を統一してバンタム級で一番強いということを証明したいので、この試合をクリアして統一戦に臨みます」
――ダスマリナスの印象を教えてください。
井上「ひょろひょろと背が高くてリーチがあり、右フックを大きく振ってくる選手ですね。もっと攻撃的でゴリゴリと前に出てくるのかと勝手に思っていたけれど、弟(井上拓真)とのスパーリングや木村(隼人)選手との試合の映像を見る限り、意外と足を使ったりして動く選手だなという印象です」
――捕まえにくいタイプなのでは。
井上「来るときは来るので、そういうときにはカウンターが生きると思います。モロニーと比べると穴があるので、(どんな選手か)感覚としてはとらえています」
――IBFでは1位にランクされています。
井上「ポイントはそこではなく、今回は次の統一戦に向けたステップの試合という位置づけですね。これをクリアすれば統一戦が組まれると思うので、かなりモチベーションは高いですよ」
――今回の試合、注意する点は?
井上「ダスマリナスはパンチと一緒に頭を前に出してくるので、そこは注意しないと。パンチでは右フックですかね。角度が大きく、外から来るので」大きく、外から来るので」
――井上選手はサウスポーとはナルバエス、パヤノと2度対戦して早い回で倒しています。戦いやすいのでしょうか。
井上「やりにくくはないですね。アマチュア時代から苦手ではないです。ただ、ナルバエスやパヤノと違って今回の相手は長身のサウスポー。その点が初めてなので戦うのが楽しみですね」
――井上選手にとって右構えの相手とサウスポーの相手との戦い方はどう違うのでしょうか。
井上「サウスポーとの試合で気をつけなくちゃいけないのは相手の左ストレートなんです。特に上下に散らされると見えない角度で来ることがあるので。でも、サウスポーとの戦いは、前に出ている互いの手と足が当たるので駆け引きがしやすいんです。右構え同士の場合は左ジャブの差し合いがせわしないけれど、サウスポーとの戦いは左手で相手の右を押さえてしまえばいいので自分にとっては楽ですね」
――20戦(全勝17KO)しているなかでフィリピンの選手とは4度戦っています(度戦っています(4勝勝3KO)。何か共通する特徴は感じていますか。
井上「4人ですか? デビュー戦と東洋太平洋タイトルを獲得した試合、それにワルリト・パレナス、ドネア――本当だ。でも、4人には同じような特徴は感じませんね。スパーリング・パートナーとして来てもらっていたフィリピンの選手は、いかにもフィリピンの選手独特という特徴があったけれど、そういう選手と試合はしたことがなかったんです。そういう意味ではダスマリナスはフィリピンのボクサー特有の選手かも。パンチの出し方、角度など独特ですから。初めて戦うタイプなので対戦が楽しみですね。KO率も高い(約61%)ですよね」
――どんな展開をイメージしていますか。
井上「僕が追いかける展開になると思います」
――早い決着もありそうですね。
井上「いや、早くないです(笑)。長丁場も考えています。ともかくアグレッシブな試合をして、自分が納得できる試合をしたいですね」
――今回、自分に課しているノルマはありますか。
井上「判定まで行っちゃダメだなと。でも、そうすると自分でハードルを上げることになっちゃう(笑)。今回は内容が問われる試合だから一方的な内容じゃないと次に繋がらないので、タイミングが合えば倒したいですね」
――その先、1年後の自分をイメージできますか。
井上「タイトルを統一していたい……ですね。12月には3団体、そしてタイミングが合えば来年の4月あたりに4団体統一。それがちょうど1年後ですね」
――最後に、あらためて意気込みを。
井上「次の統一戦に向けて今回はしっかり結果を出さないといけないと思っています。いまは右でも左でもパンチが当たれば倒せる感覚があるので、相手に何もさせずに勝つだけです」