井上拓真の初防衛相手 アンカハス「兄(尚弥)ほどのパワーはないが聡明なボクサー。難しい試合になる」

2023年10月20日 04:50

格闘技

井上拓真の初防衛相手 アンカハス「兄(尚弥)ほどのパワーはないが聡明なボクサー。難しい試合になる」
王者返り咲きを目指すアンカハス Photo By スポニチ
 兄・尚弥に続くバンタム級4団体統一を目指すWBA世界バンタム級王者の井上拓真(27=大橋)と11月15日に東京・両国国技館で対戦する、同級6位ジェルウィン・アンカハス(31=フィリピン)もラスベガスで調整している。過去に亀田兄弟や山中慎介のスパーリングパートナーとして来日経験のある元王者を取材した。(米ラスベガス・杉浦大介通信員)
 ――井上拓真との試合が正式に決まった気持ちは。

 「ついに日本で試合ができることになって本当にハッピーです。多くの人から日本は素晴らしい国だと聞かされ、子供の頃から日本で戦うのが夢だったんです。2011、2012年には亀田兄弟、山中のスパーリングパートナーとして来日しましたが、試合をするのはこれが初めて。日本での興行の映像を見ると、ファンがボクシングを熱くサポートしているのが伝わってきます。そうやって大観衆の前で戦えるのを目標にしてきたんです。一度は決まった井岡一翔との統一戦は残念ながら流れてしまいましたが、ここでついに私の夢が叶うんです。ドリーム・カムトゥルーですよ」

 ――井上拓真をどう評価しているのか。

 「拓真の試合はYouTubeで見ています。兄(井上尚弥)ほどのパワーはなく、少しタイプは違いますが、技術がしっかりしていることでは共通しています。スキルがあり、フットワークがよく、聡明なボクサーという印象です。私にとっても難しい試合になるのでしょう」

 ――過去の試合ではどれが印象に残っているか。

 「最新の(リボリオ・)ソリス戦はもちろん見ましたし、拓真が敗れた(ノルディーヌ・)ウバーリ戦は印象的でしたね。私と同じフィリピン人のジェイク・ボルネアとの試合も見ました。それらの戦いぶりからも、拓真の頭の良さはわかります。尚弥、拓真ともにアマチュア時代からしっかり訓練されており、陣営の素晴らしさも伝わってきています。今回の私との初防衛戦にもしっかりと準備を積んでくることでしょう」

 ――どのように戦うつもりか。

 「私はもう31歳になり、ボクサーとして多くの経験を積んできました。その経験を生かし、彼がやろうとすることにうまく適応したいと考えています。積極的に攻めるときは攻め、彼が打って来たらカウンターで迎え撃ちたいですね」

 ――勝つためにKOは必要か。

 「そのチャンスがあったなら、KOを目指して攻め込むつもりです。ただ、基本的にはプラン通りに戦います。ジャッジを信用していますし、KOしようとしてハードパンチばかりを出そうとするとうまくいかないものです。2つの敗戦から学び、より成熟した私は経験を生かして戦いたいと考えています」

 ――スーパーフライ級は減量が厳しくなっていたが、バンタム級で苦しさから解放されたのか。

 「スーパーフライ級の体重を5、6年も維持するのは大変なことでした。気力は保っていても、体が動かなくなっていたんです。前の試合にはスーパーバンタム級で臨み、その一戦ではもちろんウェイトコントロールは非常に容易でした」

 ――過去、バンタム級での試合経験はあるのか。

 「かつてバンタム級でノンタイトルファイトを行ったことがあります。この体重の方が今ではより快適に動けるという自信があります」

 ――マルチネスに2連敗後、引退は考えなかったのか。

 「正直、考えました。負けると多くのことを考えてしまうもので、その中には戦いをやめることも含まれていました。ただ、ヒメネス・トレーナーをはじめ、多くの人に「まだやれる」「階級を上げれば技術はあるんだから」と引き止められたんです」

 ――今の目標は。

 「まずは拓真に勝って、チャンピオンに返り咲くこと。それを達成したら、今度こそ統一戦をやってみたいですね。4団体統一は究極の目標です」

 ――家族構成は。

 「妻と4人の子供がいます。長男は10歳、次男は8歳、長女は4歳でもうすぐ5歳。それに加え、まだ9ヶ月の3男がいます。3男は去年の12月に生まれ、私は1月にはアメリカに来てしまったので、1カ月しか一緒にいられませんでした。早いもので、今ではもうハイハイができるようになったんです。その成長過程が見られないのは残念ですが、これも家族のために必要な犠牲だと考えています」

 ――家族こそがモチベーションなのか。

 「その通りです。正直に言いますが、マーロン(・タパレス)も子供がいないときにはトレーニングに身が入っていませんでした。それが娘が生まれた後、別人のように一生懸命に練習するようになったんです。強くなったのはそれが理由でしょう(笑)」

 ――タパレスとは仲がいいのか。

 「私が山中のスパーリングパートナーを務めたとき、マーロンと一緒に日本に行ったんです。私もマーロンもサウスポーなので、山中がモレノと対戦する際にパートナーに起用されたんです。彼とは仲がいいし、スパーリングもしてきましたよ。今回はお互いの相手がオーソドックスの選手なのでもうしませんが、マーロンが(サウスポーの)大森(将平)と対戦した際にはスパーリングの相手もしました」

 ――日本で印象に残っている思い出は。

 「ある日、ジムから帰ろうとすると、ミスターホンダ(帝拳ジムの本田明彦会長)が傘を持って追いかけてきてくれたことがありました。「雨は降ってないですよ」と言ったんですが、「いいから持っていけ」と。ミスターホンダのおかげで濡れずにすみました。そのとき、日本の天気予報は正確なんだなと感心させられたのです。本当にすごい国だと思います(笑)」

 ――現在の練習スケジュールは。

 「月曜から土曜日まで練習し、月、水、金曜日にスパーリングをこなしています。スパーリングパートナーの名前はわかりませんが、アマチュアで実績のある選手と重点的にスパーをこなしています」

 ――今後のスケジュールは。

 「11月の1週目に日本に行き、試合までの2週間を日本で過ごすつもりです」

 ――ボクシング以外に日本で何をしたいか。

 「日本の食事は素晴らしいので、ラーメンや寿司を食べたいですね。日本で初めて寿司を食べたとき、ワサビが何だか知らず、アイスクリームと勘違いしたんです。わさびをスプーンですくい、一口食べたおかげで大変な目に遭いました(笑)。その後、フィリピンに戻って寿司を食べたとき、ワサビを知らないジムメイトに「アイスクリームだから」と食べさせる悪戯をして楽しんだものです(笑)」

おすすめテーマ

2023年10月20日のニュース

【楽天】オススメアイテム