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427万円の価格で200台限定の抽選販売!『スカイラインGTSオーテックバージョン』を新車で購入してから35年間貫くクルマ愛

2024年01月05日 10:00

427万円の価格で200台限定の抽選販売!『スカイラインGTSオーテックバージョン』を新車で購入してから35年間貫くクルマ愛
R31型スカイラインに設定された「オーテックバージョン」とは? 本来なら日産自動車で桜井氏自身が開発主管として手がける最後のスカイラインとなるはずだった『R31』。しかし彼は病に倒れ、志半ばで伊藤修令氏に開発主管を引き継 […]

R31型スカイラインに設定された「オーテックバージョン」とは?

本来なら日産自動車で桜井氏自身が開発主管として手がける最後のスカイラインとなるはずだった『R31』。しかし彼は病に倒れ、志半ばで伊藤修令氏に開発主管を引き継ぎ、1984年に4ドアハードトップ、4ドアセダン、ワゴン系を発売するも、ハイソカーを意識した内外装や、熟成不足のエンジンとサスペンションも不評だった。

『SKYLINE GTS AUTECH VERSION』は7代目、R31の2ドアスポーツクーペGTSをベースとしたコンプリートカー。

翌年にはスポーティな2ドアスポーツクーペを追加し、1987年にはスカイライン(R31)シリーズ全体のマイナーチェンジを行ったほか、グループAホモロゲーションモデルである『スカイラインGTS-R』を限定800台で発売。これが即完売となるなど、スカイライン人気は回復してきていた。

『スカイラインGTSオーテックバージョン』専用デザインのフロントグリル。右側にオイルクーラー、左側にインタークーラーを備える。当時としては珍しいプロジェクターヘッドランプ、ボディ同色カラードドアミラーを標準装備。(NISSANステッカーはノンオリジナル)

1988年(昭和63年)8月22日に発売された『スカイラインGTSオーテックバージョン』はオーテックジャパンが得意とする少量生産、特装車生産技術を活かして開発された初のコンプリートカーだ。しかも体調が回復後にオーテックジャパン初代社長に就任していた「スカイラインの父」桜井眞一郎氏が、志半ばで離れたR31を自らがチューニングしたという事実に桜井ファン、スカイラインファンは胸を熱くした。

こだわりのチューニングは細部にまで及び、車両本体価格は427万円と高価だったにも関わらず、限定200台に対して購入希望者が殺到したことから抽選販売となった。

1988年当時の自動車価格
スカイライン(R31)自体は149万4000円〜264万4000円、GTS-Rは340万円という設定で、スカイラインが強く意識したハイソカーでは、マークIIが170万3000円〜319万5000円、ソアラが237万2000円〜489万6000円だった。
日産では同年発売の初代シーマが383万5000円〜510万円。同時期のクラウンが168万4000円〜501万2000円と、センチュリーやプレジデントを除く一般的な上級車種がグレードによっては500万円を超えてきた時代だ。
(編集部註)
『スカイライン GTSオーテックバージョン』のRB20DETエンジンは圧縮比は8.5でギャレット製エキゾースト側T25/コンプレッサー側T3タービンで最高出力210PS/6400rpm、最大トルク25.0kgm/2800rpmを発揮。中低速域から有効なトルクを発生し、当時2000ccエンジンでトップクラスの性能を誇った。カムカバーはシャンパンゴールドに塗装。ストラットタワーバーはNISMO製に交換されている。
なお『GTS-R』のRB20DET-Rエンジンはギャレット製T04Eタービンで最高出力210PS/6400rpm、最大トルク25.0kgm/ 4800rpm、『GTSツインカムターボ』のRB20DETエンジンは最高出力190PS/6400rpm、最大トルク24.5kgm / 4800rpmとなっている。

エンジンは直列6気筒DOHCインタークーラーターボのRB20DETをベースに最高出力210PS/400rpm、25.0kgm/2800rpm。『GTS-R』と同じレベルの最高出力までチューニンングしているが小型のスチール製タービン(ギャレット製T25/T3)と専用エキゾーストマニホールドとコンピュターコントロールユニットに変更するなどして、低回転域から高回転域までどこからでも有効トルクを発生する『大人のチューニング』が施されていた。

クーペとして理想的なコンパクトキャビン。これに伸びやかで長めのボディの比率が実に美しいR31スカイライン2ドアスポーツクーペのサイドビュー。Cピラーはリヤタイヤへ向かって『6』の数字を描き、Aピラーはフロントタイヤの中心に向かって一直線に落ちる。
(撮影車は17インチBBSホイールへと交換されている。)

標準装着タイヤは2ドア『GTS』系、『GTS-R』で高評価の205/60R15サイズではなく、R31初期型の発売当初と同じ215/60R15 サイズのブリヂストンポテンザRE-88を採用。ホイールは『GTS-R』がスチールホイール(BBS製アルミホイールはオプションだった)に対して、日本製で軽量なボルクレーシング3ピースアルミホイールを採用していた。

R31の目玉だった4輪操舵システムHICASを装備しない『GTS』 を敢えてベース車両に選択し、独自のリヤコントロールリンクが組み込まれる。そのため、組み合わされるステアリングのギヤ比もスローで穏やかなものだ。

更にフロント&リヤストラットタワーバーを装着して、剛性をアップ。緩めに組まれた機械式LSDと専用サスペンション、8段階減衰力調整式ショックアブソーバーにによって、しなやかに路面を捉えるセッティングが施されていた。

R31からスカイライン2ドアはハードトップではなくクーペボディを採用。適度にシャープなエッジが効いた四角いデザインは今見るととても新鮮だ。Bピラーを持つためリヤサイドウインドウは開閉できなくなったが、ボディ剛性は大幅に向上している。ボディ同色のカラードドアミラーもオーテックバージョンの特徴だ。

筆者はショートサーキットで、ほぼノーマルの『スカイラインGTSオーテックバージョン』に乗って、腕の立つドライバーの操る『GTS-R』を追いかけたことがあるが、その走りは同等。ヘアピンコーナーの立ち上がりなどでは、素直でしなやかなサスペンションと低中速トルクに優るエンジンを持つ『GTSオーテックバージョン』の方が、『GTS-R』より速いくらいであったことに驚き、感銘を受けた。

こだわりの専用ボディカラーのみの設定と豪華装備の数々

エクステリアは専用色グレイッシュブラウンメタリックのみ。決して派手ではないが、大人の落ち着いた雰囲気のボディカラーで高級感がある。 ブラックアウトされたウインドウモール類、ボディを一周するプロテクターとの相性も良い。
インテリアはグレーのみ。 『GTS-R』同様にイタルボランテ製本革巻ステアリングホイール&本革巻シフトノブの採用、オートエアコン標準装備、アルパイン製高級オーディオ(当時の価格で30万円!)をオプション設定で用意するなど特別感、所有する満足感の方を重視していることが理解できる。

撮影車はマフラーをフジツボレガリスRに交換さしている。また本来『GTS』ステッカーの部分が『GTS-X』ステッカーが貼られていた。

安全装備に関しても4WAS(4輪アンチスキッドブレーキシステム=ABS)、停止表示板組込みトランクリッド、ハイマウントストップランプ付き専用リヤスポイラーをいち早く標準採用するなど、随所に強いこだわりが感じられる。
伊藤修令氏の『GTS-R』からは荒々しさとレースへの『熱い情熱』が伝わってくるが、桜井眞一郎氏の『GTSオーテックバージョン』からは『洗練された走り』と味わい深さといったようなものが伝わってくる。

『スカイラインGTSオーテックバージョン』専用のハイマウントストップランプ付リヤスポイラーと停止表示板組込みトランクリッド(内側ベルベックス処理)を備える。

スポーツカーを卒業した『大人のためのスポーツクーペ』は、エンジンやシャシーがそれぞれ個性を主張するのではなく「乗ってみるとなんかこのクルマはいいね!」と言いたくなるような走りだ。数々のレース経験から得たノウハウと『スカイラインとはどんなクルマなのか』を知り尽くした桜井氏の『哲学』が感じられる。

『スカイラインGTSオーテックバージョン』専用のボディ色『グレイッシュブラウンメタリック』は落ち着いた輝きの大人のカラーだ。R日産GT-R(R35)Tスペックのボディ色ミレニアムジェイドとその走りにも共通するものが感じられる。

『スカイラインGTSオーテックバージョン(R31)』から始まった渋いゴールド系ボディカラーは次の『スカイライン2.6オーテックバージョン(R32)』や日産のカタログモデルであるスカイラインGT-R(R34)Mスペック、日産GT-R(R35)Tスペックへと少しずつ色味を変えながら継承されているように感じられる。

『Autech JAPAN』のサイドステッカーエンブレム。その上の『GT』エンブレムは金色、通称『金バッチ』だ。GT-Rなどスポーツモデルが通称『赤バッチ』だが豪華装備としなやかなサスペンションを持つ大人のグレードにはゴールドエンブレムがよく似合う。

筆者は日産GT-R(R35)Tスペックを試乗する機会があったがボディカラーだけではなく、サーキットやラップタイムの追求ではなく、あくまでストリートであり、サスペンションや快適装備を備えているなど『スカイラインGTSオーテックバージョン(R31)』の『哲学』と共通点を感じることができた。

新車で購入し、35年間愛し続けた『スカイラインGTSオーテックバージョン』

1988年、200台限定の『スカイラインGTSオーテックバージョン』を抽選販売によって新車購入したこの車両のオーナー南十字星さん

今回撮影させていただいた『スカイラインGTSオーテックバージョン』は、かなりオリジナリティが保たれている車両だ。新車で購入して以来35年間、昭和、平成、令和と乗りつづけてきたオーナーの南十字星さんは「発売当時は改造に対する規制が厳しく、エンジンやサスペンションに手を加えて新車でナンバー登録するのが容易ではない時代で、このクルマは限定200台の抽選でしたが運よく手に入れることができました」と当時を振り返る。

リヤタイヤは215/45R17のミシュランパイロットスポーツ4にスカイラインGT-R(R32)の17インチ純正BBSホイールと対向2potブレーキキャリパーをシャンパンゴールド塗装して装着する。
フロントタイヤもリヤと同様。GT-R(R32)用の対向4potブレーキキャリパー&ホイールを装着。R31は4穴仕様だが、フェアレディZ(Z31)用ハブ流用で5穴へ変更している。

「購入後はその走りに惚れ込み、少し前までは現役でサーキット走行していましたのでR31 HOUSE車高調サスキットを組み、ハブを4穴から5穴化(Z31用を流用)してGT-R(R32)のVスペック用BBSホイールとブレンボブレーキキャリパーをシャンパンゴールドに塗装して、装着しました」

今となっては新鮮な直立したスクエアなデザインの専用インスツルメントクラスター(樹脂面にベルベックス処理)。ステアリングはイタルボランテIMOLA、シフトノブはNISMO、オーディオ一式は社外品に交換されており、ノンオリジナル。
GTS標準シート(専用クロス張り)、専用ループパイル地のカーペットをフロア全体に採用するなど、一見するとノーマルのようだがこだりの素材が質感を向上させている。

「当時のオリジナルを出来るだけ維持しようと努めていますが手に入らない部品が増えてきましたので、アフターパーツに交換せざるを得ない状況です。 それでもなるべくオリジナルのオーテックジャパンのイメージを崩さないようにしたいと心がけながら維持しています。 友人たちには「R31でスポーツ走行をしたら、もったいない」と言われて、今は他にサーキット用のクルマも所有していますが、長年連れ添ったこのR31の走りが一番しっくりくるんです。まだまだ元気に走りますよ」ととても嬉しそうに語ってくれた。

南十字星さんは『スカイラインGTSオーテックバージョン』を新車購入して以来、35年。これからも元気に走り続ける。

35年以上愛され続け、まだこれからも乗り続けたいと思わせてくれるなんて、本当に素晴らしいことだ。 まるで家族の一員とも言えるような存在となる『スカイラインGTSオーテックバージョン』なら、当時としては高額だった車両価格427万円を遥かに上回る『所有する喜び』や『価値ある時間』をオーナーは過ごすことが出来ることを今回再確認した。サブスクや生産効率ばかりが優先された新車が多い現代こそ、オーテックジャパンが提供してきた『走りへのこだわり』を詰め込んだ『永く愛されるクルマ』達が光り輝いて見える。

『スカイラインGTSオーテックバージョン』フォトギャラリー

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