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S13シルビアのレストアにMR-Sのエンジン載せ替え! ロードスターベースのS-FRカスタム! 【東京オートサロン2024】で自動車大学校の実力を見た

2024年01月20日 10:00

S13シルビアのレストアにMR-Sのエンジン載せ替え! ロードスターベースのS-FRカスタム! 【東京オートサロン2024】で自動車大学校の実力を見た
『オートサロン』はカスタムカー&チューニングカーの祭典。それだけに、自動車大学校の展示車両もやはりカスタムカーが多い。実際、大学でもカスタム系のカリキュラムも用意されるなど、自動車の技術ジャンルとしてカスタムは確 […]

『オートサロン』はカスタムカー&チューニングカーの祭典。それだけに、自動車大学校の展示車両もやはりカスタムカーが多い。実際、大学でもカスタム系のカリキュラムも用意されるなど、自動車の技術ジャンルとしてカスタムは確立されている。
一方で、自動車のメンテナンスや修理といった保守本流とも言えるジャンルの展示としてレストア車も展示される。カスタムカーが目立つNATS(日本自動車大学校)でも、袖ヶ浦校の展示としてレストアカーが毎年展示されている。

そんな、自動車大学校が手がけたレストアカーを幾つか見ていきたい。極上のクラシックカーをオーナーがー所有していた状態に忠実にレストアしたNATSのマツダ・ルーチェとは違った、それぞれの学校と生徒のアプローチがうかがえる。

関東工業自動車大学校のS13シルビア走行会仕様

関東工業自動車大学校のシルビア(S13)。

関東工業自動車大学校が展示していたのが日産シルビア(S13)。このクルマを選んだ理由を訊いてみたところ、たまたま校内にあったからだという。しかもはお世辞にも良いと言える状態ではなかったようだ。

レストア前の車両の写真も展示されていた。

この状態から「走行会仕様」という方向を定めレストアが進められ、そのコンセプトに沿ってロールバーやバケットシート、エンジンまわりのカスタムが行われた。

ベースになったシルビア(S13)はNAエンジン搭載の「Q’s」。

走り屋のデートカーとして一世を風靡し、今なおネオクラシック車やドリフト車として人気のあるS13型のシルビアではあるが、いかんせん1988年から1993年のモデル。すでに生産終了から30年が経過しているだけに、新品の純正部品を入手するのは困難。流用部品や元の部品を修理することで対応したとか。

走行会仕様というコンセプトから、ロールケージにBRIDEのフルバケットシート、トランクや大きなエアスクープの空いたボンネットフード、フューエルリッドはピン留めになっている。前後ともオーバーフェンダーを装着した迫力のあるのフォルムなら、その仕上がりは実に自然だ。エアロパーツはBN sports製を装着する。
オーバーフェンダーには大径ホイールに装着したロープロファイルタイヤを履く。ホイールはRAYS、タイヤはトーヨータイヤを装着。

外装パーツやエアロパーツ、塗装などのエクステリアの仕上がりはもちろん、インテリアの仕上がりも良く、確かに走行会の会場で見かけそうなクルマに仕上がっている。実際に走行会などに出るのか尋ねてみたところ、まだそこまでは仕上がっていないとのこと。S13型シルビアも今や貴重なネオクラシック車だけに、その完成が楽しみだ。

シルビアの隣には以前所有していたフェアレディZ(S30)が並べられていた。
ドリフト選手の川畑真人選手のガレージにあったホワイトボディかを復活させて製作したものだそうだ。

トヨタ東京自動車大学校のエンジン載せ替えMR-S

自動車メーカー直系であるトヨタ東京自動車大学校の展示は直系ならではの内容を感じさせるものがあった。オリジナルデザインのエクステリアを纏ったレクサスSC「SP430(steampunk)」や、学校の所在地である東京都八王子市をリスペクトしたエクステリアのレクサスLC「LC802(Love City ハチオウジ)」がそれだ。
2010年に販売終了したレクサスSCはともかく、1000万円オーバーの現行モデルであるレクサスLCが用意できるのはメーカー直系の強みと言えよう。

トヨタ東京自動車大学校ブース

2台の高級車の間に挟まれて展示されていたのが「MR-忍者」と名付けられたMR-Sベースのカスタムカー。オリジナルのカラーリングやエアロくらいしかノーマルとの違いは見られないように思われるが、これはエンジンをノーマルの1ZZからセリカ(ZZT231)の2ZZに載せ替えているという。

トヨタ東京自動車大学校のMR-忍者。エアロキットなどを組んでいるが、メーカーなどは不明。

横置きFFのセリカに対してMR-Sは横置きミッドシップレイアウトのリヤ駆動。とはいえ、ドライブトレーンはセリカを180度逆転した構造になっており、トランスミッションの締結も同様なので、エンジン自体はそのまま載せ替え、トランスミッションはセリカの6速MTではなくMR-Sの5速MTにしている。

トヨタ東京自動車大学校のMR-忍者。車高を落とし、エンジンのパワーアップに見合ったスポーティなセッティングにしている。

載せ替え時の問題は吸気系がバルクヘッド側に行くため作業スペースが極めて狭いことと、吸排気系の取り回し。吸気系はパイピングを加工し、エアクリーナーを社外品にすることで対応。排気系はエキゾーストマニホールドまではそのままで、センターパイプから先を加工し、やはり加工したマフラーを組み合わせている。

ヘッドカバーやタワーバーをコバルトブルーで塗装。エンジンルームの良いアクセントになっている。エアクリーナーのステーなど、いかにも手作り感がある。

しかし、なぜ忍者なのか?という話を聞いてみたところ、このクルマを製作するにあたってボディカラーが明るいグレーにするか暗いグレーにするかで意見が分かれたそうだ。結局、塗料の配合を工夫することで、光の加減によって明るくも暗くも見えるカラーにすることができたため、その変幻ぶりから「忍者」と名付けたそうだ。

ホイールはTANABE SPEED STARのフロント6.0J×16インチ・リヤ7.5J×17インチ。タイヤは横浜ゴムのADVAN FLEVAで、フロント195/50R16・リヤ215/40R17サイズを履く。

そしてものMR-忍者。ベースとなるMR-Sは教材専用車のため書類などがなく登録不可能なのだそうだ。教材専用車という存在にまたメーカー直系らしさを感じざるを得ない。
公道走行不可のこのクルマをどうするのかと言えば、校内コースでドライビングレッスン用に使用するとのこと。校内にそうした施設があるのは自動車大学校の大きな魅力と言えるだろう。

ブレーキキャリパーは「えんどれす」。こうした遊び心は学生ならではだ。

埼玉自動車大学校のS-FRコンバーチブル

埼玉自動車大学校のブースにはサポートするグッドスマイルレーシングのGTマシンも展示された。

自動車大学校のカスタムカーでも特に注目を集めていたクルマの1台が埼玉自動車大学校の「S-FR Convertible」だろう。というのも、トヨタが2015年の『東京モーターショー』で発表したコンパクトFRスポーツのコンセプトカー「S-FR」そっくりのカスタムカーだからだ。

トヨタS-FR

内外装の完成度の高さやその具体性から、巷では市販化間違いなしと噂されもしたが結局世に出ることなく消えたモデルだ。しかし、当時からして極めて稀少な存在となっていたコンパクトFRスポーツだけに未だに待望論があるだけに、埼玉自動車大学校のカスタムカーの注目度も宜なるかな。

埼玉自動車大学校の「S-FR Convertible」。ベースはNC型のマツダ・ロードスター。

埼玉自動車大学校の「S-FR Convertible」は三代目マツダ・ロードスター(NC)をベースに、協賛社の協力で製作したオリジナルの外装でS-FRを再現している。再現度もなかなかだが、ロードスターのカスタムとして破綻の無い高い完成度に仕上がっている。

埼玉自動車大学校の「S-FR Convertible」

製作にあたってはトヨタにデザインの版権について確認した上、S-FR担当のデザイナーに監修も受けているという。本来ならS-FRの実車も確認したかったと言うが、件のデザイナー曰く「もうない」とのことだったそうだ。

埼玉自動車大学校の「S-FR Convertible」

オリジナルの外装以外は協賛各社のパーツで構成されているが、そのコーディネートも見事。このままコンプリートカーとして市販できるのではないかと思わせる。実際、来場者からは外装キットの販売の可能性などを問われることもあったそうで、その反響は大きそうだ。

埼玉自動車大学校の「S-FR Convertible」のインテリア。基本的にはノーマルだが、シートはBRIDE、ステアリングはスパルコを装着する。

確かにこの完成度で量産が可能なのであればキットとしての市販も不目ではなさそうだ。しかしスタッフ曰く、”学校”であることから利益を出してはならないという。それはそれでなるほどだが、これがこのままコンセプトモデルとして終わってしまうのは惜しい。

埼玉自動車大学校の「S-FR Convertible」のインテリア。多くのパーツメーカーが協賛している。

例えば、「Design by 埼玉自動車大学校」のブランド名でデザインをショップやサプライヤーに提供し、ショップやサプライヤーが販売するのであれば、学校は知名度が上がり、ショップは新たなビジネスチャンスを得、ユーザーは欲しいキットが手に入り三方良しになるのでは……と考えるのはいささか浅はかだろうか?

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