「真田丸」藤岡弘、本多忠勝役は運命の出会い 侍精神でリハ不要
2016年09月17日 10:00
芸能
「当時の侍の覚悟というものは、こういう時にこそ見せるもの。武士(もののふ)の生き様の真髄ですよね。自分の命を捧げることを惜しまず、これが義であり、これが侍としての心得であると通していく。そんな忠勝に僕は惚れているんですよ」
それゆえ、今作で忠勝役のオファーが来た時は驚きを隠せなかった。「ビックリしましたね。本当に忠勝に惚れて、足跡を探求するのが楽しくて仕方なかった頃があったので『これは忠勝が呼んだのか』と思うくらいでした。俳優生活を51年やっていますけど、こんな体験はなかなかあるものではないですね。役者冥利に尽きる出会いでした」と“運命”を感じた。
念願の忠勝役に気持ちは高ぶり、撮影前夜は寝言でセリフをつぶやいていたかもしれないと疑うほど。「自分が演じたかった武将ですから。演じるというよりも“なり切りたい”という気持ちが強かったですね。忠勝になりたいという願望と、こういう侍が日本にいたんだな…という喜びもありました。武士道精神の原点をこの人は内包しているのではないかと思うこともありますね」と“忠勝愛”を語る。
その素顔はまるで“現代の侍”。心が乱れていると感じれば、精神統一のために自身の道場で真剣を振るという剣豪としての一面を持つ。「夜にろうそくを1本立てて真剣を振るんですよ。何万回、何十万回振ったか分からないですが、真剣というものは少しでも心に乱れがあると(刀を鞘に)戻す時に手をスパッと切ってしまう。いつも身と心を引き締め、緊迫感を持って真剣を振っています」
侍にリハ―サルはなく、一瞬、一瞬に命を懸けた。その考えから映画やドラマの撮影でも“一発勝負”を望む。
「昔はCGもなかったし、絶えず一発勝負。当時の先輩たちの凄さや、そういう諸先輩の中で鍛えられたことを思い出しますね。台本を何十回も読んで、いろいろなことを想像しましたが、『100回、200回読め』と言われてショックを受けたこともありました。でも、昔の先輩方には感謝しています。今はカメラなどの機材も良いものに変わったりしていますが、あの緊張感の中で一発でやりたいね。リハーサルは要らないと、いつも思っています」と持論。リハーサルなしの一発勝負が当たり前だった昔の日本映画界を懐かしむ。
最愛の娘・稲を家康の養女とし、信幸の正室として嫁に出すという決断をした忠勝。当初は信幸を厳しい目で見定めていたが、その関係にも変化が生まれてきた。「戦国時代は並大抵の覚悟がないと生き抜いていけない世の中ですから、忠勝としては自分の婿がこの戦乱の世を生き延びていけるかどうか試して、彼の侍魂のようなものを見ていたと思います。当時の侍は決意、覚悟、信念を兼ね備えていないと生きられなかった。そのようなものを持った器なのかということを見ているうちに、段々と惚れ込んでいったと考えています」
18日放送の第37話「信之」は、関ヶ原での西軍敗北により真田昌幸(草刈正雄)信繁(堺雅人)親子が徳川家康(内野聖陽)に降伏。忠勝と真田信幸(大泉洋)は家康に必死の助命懇願を行う。
忠勝にとっては最大の見せ場。藤岡は「あの場面があって、この作品に出て良かったなと思いましたし、(脚本の)三谷幸喜先生は凄いなと思いました。ぜひ見てください。誠の男の侍魂を、命懸けでぶつけていますから」と力強く語った。