気分だけでも
2017年09月17日 09:30
芸能
釈然としない。こいでいるのはれっきとしたロードバイク。内燃機関やモーターを使わない乗り物としては路上最速と信じていた。なのに人間より遅いなんて。
ここでハタと気づいた。サイクリングの延長で走ったのが間違いなんだ。時速20キロ程度では問題外。ではどのくらいのスピードを出せばいいのだろう。
脚を回しながら暗算してみる。かりに100メートルを10秒ジャストで駆け抜けるとしよう。すると1分で600メートル進む。1時間なら600メートル×60分だから3万6000メートルだ。つまり、時速36キロ!
ここは競輪選手のように重いギアでダンシングし、もがきまくるしかない。もちろん下ハンを握って。普段、絶対に使わない歯数のギアにシフトアップ。サイクルコンピューターに示される数字をチラチラ確認しながら加速する。「35」となった時点で標識を通過。そのまま必死に10カウントだ。おお、ほぼほぼだが10秒ジャストで100メートルに達したではないか(当然だ)。
その体感を一言で表現すると「少々怖い」。それほどのスピード感だ。もし落車したら大ケガでは済まない。身の危険を覚えるほどのしびれ方だった。
これを自分の脚力だけで実現している人がいるのかと思うと絶句する。しかも10秒じゃなくて9秒98だ。まだ負けているのか…。
と、ここまで書いて、さらに肝心な事実に気がついた。陸上選手はスタート時の完全静止が絶対条件。今回の実験のように始動前から加速しているわけではない。時速36キロはあくまで平均速度。実際のランナーは最高速40キロ以上を求められるという。
ロードバイクより速く走るのが一流のスプリンターなのか。
アンタが貧脚なだけでしょ、と言われればそれまでの話。(専門委員)
◆我満 晴朗(がまん・はるお)1962年、東京都生まれ。ジョン・ボンジョビと同い年。64年東京五輪は全く記憶にない。スポニチでは運動部などで夏冬の五輪競技を中心に広く浅く取材し、現在は文化社会部でレジャー面などを担当。たまに将棋の王将戦にも出没し「何の専門ですか?」と尋ねられて答えに窮する。愛車はジオス・コンパクトプロとピナレロ・クアトロ。