大杉漣さん 60代でも挑戦者 “表現の沼”模索し続け「俳優に正解はない」
2018年02月22日 07:55
芸能
「自分の人生をどう生きるかということと役者は非常につながっているという考え方をしているものですから、セリフ1つにしても、こいつは普段どういう生き方をし、どういうふうに日々を過ごしているのかということが写し鏡のように出てくる。それが演技という作業だと思っています。65歳になっても、こんなにフワフワしていて、今まで自分の中で“これでよし”なんていう確信めいた答えがあったかどうか、分かりません。本当に一生懸命、1本1本の作品とちゃんと向き合うことしかなかったと思います」
百戦錬磨の大杉さんをして、芝居は底の見えない“表現の沼”と表現し、右往左往しながら模索し続けていると自己分析した。
「ただ、この年齢になっても、こうやって右往左往できる素晴らしさというのはあると思うんです。ウロウロすることは、そんなに悪いことでもないと思っているんですね。俳優の仕事というのは、そういうことが許されると言うと変かもしれませんが、そういうことを背負わなきゃいけない仕事だと思います」
今後について尋ねると「だから、65歳で落ち着いているかというと、全く違う。真逆かも分からないですね。俳優というのは、このやり方をすれば、こうなるという正解はまずないので、これからも自分なりの仕事の流儀みたいなものを探して、獲得していく作業があります。いろいろ模索しながら、やっていくんだと思います」。演技への飽くなき挑戦を語った。
大杉さんの若々しさとチャレンジャーの姿勢は、今作「バイプレイヤーズ〜もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら〜」になり、より具体的に表れた。
今月5日、松重豊(55)との対談形式で取材。大杉さんは松重の映画デビュー作「地獄の警備員」(1992年公開)で初共演。約30年の付き合いだが、松重に「27歳の時、僕は大杉さんの背中を見て、映像の中で生きる俳優の在り方を学びました。その若者が今55歳になって、大杉さんみたいに…と思っていたことが確信に変わっているわけじゃないですか。そして、大杉さんは60半ばになっても、全く変わらない。あの時と全く変わらないんですよ」と言われ「いやぁ、さらにフラフラしている」と大笑いした。
黒のスーツに身を包んだバイプレイヤーたちが海の中から現れるオープニング映像、バイプレイヤーたちも撮影本番が始まるまで誰か分からないシークレットゲストは、大杉さんがアイデアを出した。
前作から企画を担当するドリマックス・テレビジョンの浅野敦也プロデューサーも「『バイプレイヤーズ』という作品が生まれたのであれば、他のドラマにはないこと、新しいことをやりたいと、5人全員が口を揃えておっしゃいます。皆さん、何事にもチャレンジされたい。大杉さんが一番精神がお若いかもしれません」と大杉さんの進取の気性を明かしていた。
大杉さんの創意あふれる芝居をまだまだ見たかった。