安田顕、ビートルズから学んだ「定石にとらわれない」演劇

2018年09月11日 09:30

芸能

安田顕、ビートルズから学んだ「定石にとらわれない」演劇
ビートルズの衣装を長年仕立てた故トミー・ナッタ―さんの本を持って笑顔の安田顕 Photo By スポニチ
 ドラマや映画に引っ張りだこの「TEAM NACS」のメンバーで俳優の安田顕(44)は、30年来の「ザ・ビートルズ」のファンだ。芸能界を代表するフリークで、「イントロを聴けば、どの曲か全部分かる」というほど。最近、ビートルズの故郷・英国を旅し、改めて存在の大きさを思い知らされた。
◆中2で出会い衝撃

 ドラマの撮影後に1人で向かったのは、都内にあるソウルバー。麦焼酎をロックで飲みながら、音楽に耳を傾ける。流れるのはソウルではない。もちろんビートルズ。カウンター近くに、安田が持ち込んだレコードが何十枚と積み重なって置かれている。「今日はアビイ・ロードかな」。マスターがドーナツ盤に針を落とす。何度聴いても飽きないあまたの名曲とともに過ごす、この時間が至福の時だ。

 既に解散していた世界的バンドを知ったのは中2の時。兄のレコードプレーヤーをお下がりでもらった。「レコードを持ってないから、父の友人が貸してくれたんですよ。それが赤盤と青盤でした」。初体験の洋楽だったが、すぐにゾッコン。「聴いたことのある曲も多かったし、単純に良い音楽だったんじゃないでしょうか」

 言わずと知れた2枚のベスト盤。赤盤(62〜66年の曲)は「ラヴ・ミー・ドゥ」「イエスタデイ」「イエロー・サブマリン」など、青盤(67〜70年)には「ヘイ・ジュード」「レット・イット・ビー」などを収録。2作だけで世界で3000万枚を売り上げている。

 それからはビートルズ一筋。同級生がチェッカーズで盛り上がる中、テープにダビングしたビートルズを聴いた。修学旅行に行っても小遣いを大事に取っておき、室蘭のデパートでレコードを買い集めた。

 当時入会したファンクラブは今も継続中。月刊の会報はすべて保管してある。もちろん、昨年4月にポール・マッカートニーが開いた日本武道館公演も観賞。「“ブラックバード”でギターを間違えたんですよ。何万回とプレーした曲なのに。凄いもの見たなって、みんな大盛り上がりですよ」。興奮するポイントがマニアックだ。

 今も新たにライブ盤やCDボックス、レコードが発売されれば必ず買う。「家族にはこう言われるんです。“全部同じ曲でしょ”って。理解してもらえないんですよね」。素人には同じ曲でも、ファンにはまるで別物。ちょっとした違いも楽しみのひとつになる。

◆世代を超えた音楽

 「世代の音楽じゃない」と分析している。「ポール・マッカートニーはまだ現役ですよ。5年、10年単位の音楽ではないじゃないですか。100年、200年単位の音楽。そういう意味では、大いに今も世代と言える。そう言い切れるだけの力が音楽にあるから、僕もハマったんじゃないかなと思うんです」

 ビートルズに学んだことは「定石にとらわれない」こと。楽譜が読めなくても、作曲はできる。レコード会社も自分たちでつくれる。「“インドにシタールって楽器があるんだ、じゃあ弾いてみよう”って。先人のものをたくさん受け継いでいるけど、彼らの持っている濾過(ろか)器がすごかったのだと思う」

 安田が所属する「TEAM NACS」もまた、定石にとらわれない活動をしている。北海学園大の演劇研究会で出会った、森崎博之(46)、戸次重幸(44)、大泉洋(45)、音尾琢真(42)と安田の5人組。北海道でローカルタレントとしてバラエティーで活躍し、全国放送のドラマや映画で役者業に取り組む。主演から脇役までこなす5人の存在感は、年々大きくなっている。

 5人による定期公演の舞台のチケットは常に即完売。ほかに類を見ない演劇ユニットだ。

 「将来どうなりたいなんて思ってなかった。北海道で俳優を生業とするのは難しいですからね、演技への渇望はありました。TEAM NACSは戻る場所。1人で背負い込むよりいいですよ」。ビートルズと同様、個性のぶつかり合いは大きな刺激になっている。

◆ポール来日楽しみ

 今年7月、30年来の夢をかなえた。テレビ番組の収録でロンドンを訪れ、アルバム「アビイ・ロード」のジャケット写真で4人が歩いた横断歩道を渡ったのだ。30年あこがれた夢も、歩けば5秒ほど。自然と涙がこぼれた。達成感の一方、「この先、何を目標にすれば」と思った。それだけあこがれていた。

 この2日後、偶然にもポールがここを歩いている。「会えなくて、良かったかな…。夢は夢のままの方がいいのかもしれない」

 今の楽しみは、10、11月に開かれるポールの来日公演。今度こそ「最後の来日になる」とも言われる。「東京と名古屋の3公演、すべてチケットを買いました」。行けるかどうかはTBSドラマ「下町ロケット」の撮影次第。「もちろん撮影が大事です。でも、行けなかったら…。一生後悔しますよね」。ここでは、ポールに会っておきたい。それを願う毎日である。

《主演映画に自信「景色が変わる」》 主演映画「愛しのアイリーン」(監督吉田恵輔、14日公開)は、国際結婚を軸に、夫婦、親子、家族における壮絶な愛の形をダイナミックに描いた作品。「見る前と後で、見える景色が変わる」という自信作だ。演じたのは恋愛を知らないまま42歳まで生きてきた岩男。フィリピンで嫁をお金で手に入れ、久々に帰省すると、壮絶な事件が巻き起こる。撮影期間中は中島みゆきの楽曲「瞬きもせず」を聴いて、役に入り込んだ。どんな生き方も認めようとする賛歌で「役にささげているような曲でした」と振り返った。

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