棚橋弘至 想定外だった映画初主演 不安と重圧…撮影終了に号泣「40歳の嗚咽を…」
2018年09月20日 08:30
芸能
数多のタイトルに輝く実力、女性もプロレス会場に呼び込む華のある容姿と技、立命大法学部卒の知性…強みを挙げるときりがない。PR活動の先頭に立って低迷する新日人気を復活させた立役者である。想定外だった映画主演にも、「プロレス界の隆盛あってこそ来た話。やるしかない」と腹をくくった。役作りでこだわりの長髪を切り、撮影前から息子役の寺田心(10)と発声練習やリハを重ねた。当初は「マイクアピールっぽい」と監督に指摘されたセリフ回しも、自然体になった。
昨年のG1クライマックス終了翌日にクランクイン。次の試合までの3週間、朝から晩まで撮影に励んだ。“座長”として努めて元気に振る舞い、NGを出しても「もう1回できる。より良い映画になるチャンス」と前向きに変換した。撮影終了の瞬間、不安や重圧から解き放たれて号泣。「40歳の嗚咽を披露してしまいました(笑い)」。
故障でトップ戦線から退き覆面の悪役レスラーに転向した主人公に、過去の自分が重なった。棚橋には悪役以上に嫌われた時期がある。06年のIWGPヘビー級王座初戴冠後、「チャラくて新日王者らしくない」とアンチが増えた。「愛してまーす!」のキメぜりふにも客席はシ〜ン。さすがのポジティブ男も、自身の熱意が伝わらず苦しんだ。09年6月、死闘が感動を呼んだ中西学戦でブーイングは歓声に変わった。「逆境の3年間は長かったけど、貴重な経験でしたね」。ここ数年は、「ケガで思うように動けず結果が出なかった。その間に若いオカダ・カズチカは素晴らしい王者、内藤哲也は人気者になっていく。俺は名ばかりのエースじゃん」と悔しい思いが続いた。
先月ついに、3年ぶりのG1制覇を果たした。完全復活を印象づけたが、さらなる試練を自らに課した。優勝で得た来年1月4日東京ドーム・IWGPヘビー級王座挑戦権利証の防衛をかけた戦いの相手に、強敵・オカダを指名。「今年1敗1分と勝てていないオカダを倒し、気持ちよくドームに行きたい」。本作のハイライト「ゴキブリマスク(棚橋)対ドラゴンジョージ(オカダ)」と同カードが公開2日後の23日、神戸・ワールド記念ホールで実現。劇中に劣らぬドラマを生みそうだ。
ただ、1つ心配な事がある。22日に都内で本作の舞台あいさつがあるなど、主演俳優は大一番の直前も多忙だ。自称・疲れない男を「会社も真に受けて大丈夫と思ってる」とポロリ。あれ、実は疲れてるんですか???「疲れてないです。生まれてから疲れたことないんで」と食い気味に否定し、「ちょっくら防衛してきます。神戸、絶対観に来た方がいいですよ」と屈託なく笑った。
来年でデビュー20年。「引き際を語るのは早い」と、エースの称号を若手に譲る気はまだない。「プロレスは生き方」が持論だ。「やられても、やられても、立ち上がる。苦境も多いけど悪い事ばかりじゃない。人生も同じ、あきらめずに頑張って行こうぜ!ってメッセージをプロレスに込めたい」と語る。本作もプロレスファンだけでなく、「家族のために頑張る人や、若手の突き上げを食らう同世代の共感を呼ぶはず」と自信。映画館、そして試合会場で、逸材の体を張った熱いエールを受け取って欲しい。
<親子のきずな>劇中では息子に悪役の仕事を毛嫌いされるが、棚橋の2人の子は幼稚園のころからメジャー大会を見に来ていたそうだ。「パパと叫ぶとバレるから、“棚橋〜!”って呼ばせてた」と笑う。一昨年にベストファーザー賞を受賞しただけに現在中3の長女、中1の長男とはとても仲良し。「2人とも腹筋が割れているのは遺伝ですね」と、自慢していた。
◆映画「パパはわるものチャンピオン」かつてのエースレスラー大村孝志(棚橋)の現在の姿は、悪役ゴキブリマスク。相棒のギンバエマスク(田口隆祐)と反則の限りを尽くしていた。普段は妻(木村佳乃)と息子(寺田)を愛する心優しい男だが、息子に仕事がバレてしまい、家庭内はギクシャク。そんな中、主要大会出場のチャンスが訪れる。家族のきずなとプロレス人生をかけ、一世一代の勝負に挑む。ドラマ部分に加え、現役レスラーによる迫力の試合シーンも見どころ。