宮藤官九郎脚本の来年大河「いだてん」は“庶民の話”落語と好相性「重宝」経費も抑えられる?
2018年12月17日 06:00
芸能
歌舞伎俳優の中村勘九郎(37)と俳優の阿部サダヲ(48)がダブル主演。勘九郎は「日本のマラソンの父」と称され、ストックホルム大会に日本人として五輪に初参加した金栗四三(かなくり・しそう)、阿部は水泳の前畑秀子らを見いだした名伯楽で64年の東京大会招致の立役者となった新聞記者・田畑政治(まさじ)を演じる。
物語をナビゲートする古今亭志ん生役にビートたけし(71)、若き日の志ん生・美濃部孝蔵役に俳優の森山未來(34)。志ん生の視点が加わることにより、ドラマは重層的に。第1話も、五輪が開催される見通しになった59年5月、工事だらけの東京で寄席に向かうタクシーが大渋滞に巻き込まれる志ん生から始まる。
志ん生について、宮藤氏は「もともと今回の『いだてん』が決まる前に、戦前と戦後をまたいでいる人を通して、戦争中でも強く生きた人々の生活を描きたいという話をしていて、志ん生さんの『日本では好きな落語ができないから、勝手に満州に行って死にかけた』みたいなエピソードが凄く好きだったんです」と明かす。
「それで、ちょうど金栗さん(1891年生まれ)と志ん生さん(1890年生まれ)がほぼ同い年。志ん生さんがオリンピックに関わっていた史実は全くないので創作になるんですが、志ん生さんがちょっと斜(はす)にオリンピックを見て噺(はなし)をするというのはいいかなと思いました」と志ん生の高座がストーリーテラーの役割を果たすという“仕掛け”を考案。「例えば、マラソンのレース42・195キロをずっとロケで見せるわけにもいかないじゃないですか。そういう時に落語を挟めば、だいぶ経費も抑えられるので」と笑いを誘った。
「今回の『いだてん』のように、あっちゃこっちゃに話が行く時、落語が入ると、簡単に時間を飛ばすことができたり、『その頃、あの人は…』と関係ない人の話ができたり、志ん生自身の話ができたり」と続けて落語の“効果”を説明。「あと、落語っぽいエピソードが…」と話は尽きない。
1908年ロンドン五輪のマラソンのゴール目前、疲労困憊のため何度も倒れ、その度に係員に助けられて優勝したものの、結局、失格になったイタリアのドランド・ピエトリ選手の「ドランドの悲劇」が「失格になるのは当たり前なんですが、もう意識がない選手を係員が無理やり担いで走らせて。それが凄く落語っぽいと思ったり。『いだてん』にも盛り込みましたが、長距離を走る『富久』という落語があるんですが、そんなに走れるわけがない。でも落語って、そういうウソだかホントだか分からないところが凄くいいと思うんです」。今作と落語は相性がいい。
「歴史を動かす将軍の話より、僕はやっぱり庶民の話を書きたかったので、落語だと下町がメーンになるため作りやすい。金栗さんの足袋(マラソンシューズ)を作った足袋屋『播磨屋』(1903年、東京・大塚で創業)のセットもそうですが、下町のビジュアルが世界観になっている大河ドラマって、あまりないんじゃないですか。今回、オリンピックの話を進める時に落語は凄く重宝しています」と手応えを示した。