芸人から“殺気”が消えた理由 大物P・小松純也氏が語る平成芸能界の変化「淘汰少なくなった」
2019年02月23日 09:00
芸能
第一線で「身に染みて感じている」というテレビ業界の変化―。「僕が向き合ってきた方たちは天下を取るか、取らないかという“殺気”に満ちていた。もちろん“殺気”がないけどすごい方もいらっしゃったんですが、(90年代の)芸能界は椅子取りゲームで天下を取った人が生き残って、同世代の他の方はいなくなるという仕組みでした」。それから、番組の作り方が変わっていく中で、「1人のテレビスターというより、芸人さんの塊がテレビの中での主要なツール、構成要素に」なっていった。「体1つで勝負する彼らがどれほど大変かは分かっていますので、芸人さんにとってはとても良い変化だと思います」と前置きした上で、「業界全体の淘汰が少なくなって、ほどほどのポジションでほどほどの役割を果たす人たちに活躍の場が与えられるようになったと感じます。だから、『No.1になりたい!』という気迫を垣間見る方が少なくなったのかな」と芸人の意識の変化を分析する。
昨今ささやかれている“テレビ離れ”については、「ネット配信・ゲーム含めて映像エンターテインメントに人が接する時間は減少したわけではないと思う」と持論。「ネットが普及したことで視聴者との双方向的な番組は作りやすくなりましたし、映像表現の幅はむしろ広がっていますので、作る側の意識としては逆に(環境は)良くなっていると思います」とし、「地上波のテレビマンとして言わせていただくと、地上波にも素晴らしいところがある。チャンネルを回さないと何の番組がやっているか分からない偶然の部分があって、偶然の出会いは人間にとって必要なもの。若い方がたまたま健康番組を見て、がんにまつわる情報を知ることもいいことなのではないでしょうか」と地上波の魅力を力説する。
小松氏は“受動視聴”が想定される地上波の番組だけでなく、 “積極視聴”ユーザー向けの配信映像の分野でも、「ドキュメンタル」などの人気作品を手掛けているが、「最近では視聴者の皆さんのスタンスが地上波と同じになってきている」と感じているという。「レビューを見ていると、『危ないことをしていて笑えない』という書き込みがありました。もちろん、ご覧になって楽しめなかったという点は大変申し訳ないのですが、一方で、危ないことをするとしても、私たちは出演者に絶対にケガをさせてはいけないという思いを当然、見る方よりも強く抱いています。安全に関するシミュレーションは散々しているんですけど、あえてそれを見せません。そうでなければハラハラしないので。一般社会のモラルと、エンターテインメントの中での“ルール”は根本では同じでありながら異なるもの。現実とエンタメの世界には“ルール”の違いがあるのだと理解していただけるよう、作り手側は視聴者との間に信頼関係を構築していかなければならないと思います。地上波にしろ、配信映像にしろ、(作り手と視聴者が)お互いの節度と信頼を深めて、お互いに懐が深くなると映像表現の幅はさらに広がると思います」と映像エンターテインメントが持つさらなる可能性を強調した。