5万回斬られた男、福本清三さん死去 「ラストサムライ」でも名演 日本一の殺陣職人
2021年01月05日 05:30
芸能
最後の仕事は昨年8月に撮影されたNHK・BSプレミアム時代劇「十三人の刺客」(11月28日放送)。秋以降は入退院を繰り返し、最期は家族にみとられて静かに旅立った。昨夏以前に撮影され、今年公開予定の映画もあるという。
59年、15歳で東映京都撮影所に入所し、大部屋俳優に。20代後半から斬られ役専門となり、特に同学年の松方弘樹さんとは「お兄ちゃん」「福ボン」と呼び合うほど信頼が厚く、松方さんは生前、福本さんを「5000回は斬った」と話していた。
大きな注目を集めたのは、03年の米映画「ラストサムライ」。主演トム・クルーズ(58)に従う寡黙な侍役で、前年10月に大阪で行われた製作発表にも渡辺謙(61)、真田広之(60)らとともに出席。翌年2月にニュージーランド・ロケで迎えた誕生日は、トムらからサプライズで祝福され、「ありえへんことを、たくさん経験させてもらった。ほんまに恵まれています」と、04年に出版した自伝「おちおち死んでられまへん 斬られ役ハリウッドへ行く」で語っている。このハリウッド進出で、多くの無名俳優の憧れの存在になった。
芸歴55年の節目の14年には「太秦ライムライト」で映画初主演し、この時の役の設定も斬られ役一筋のベテラン俳優。「代表作は存在しない」と言い続け、生涯斬られ役に徹したまさに侍だった。
◆福本 清三(ふくもと・せいぞう)1943年(昭18)2月3日生まれ、兵庫県出身。59年、東映京都撮影所に入所。エキストラや端役を経て斬られ役となり、78年のフジテレビ「柳生一族の陰謀」、81年の同局「同心暁蘭之介」などで頭角を現す。「太秦ライムライト」ではファンタジア国際映画祭(カナダ)で、日本人初の主演男優賞を受賞。毎日映画コンクール特別賞、日本アカデミー賞協会特別賞なども受賞している。