【男優主演賞】「アンダードッグ」森山未來 ボクシングから学んだ…悲哀、本能、快感
2021年01月22日 05:30
芸能
14年の映画賞を席巻した「百円の恋」のスタッフが再結集し、再びボクシングをテーマに据えた「アンダードッグ」は前後編で4時間半近い壮大な叙事詩。日本タイトル戦で不運な敗戦を喫して以降、「かませ犬」などとさげすまれながらもボクシングに執着する末永晃を演じた。
「寡黙な役柄なので、数少ない言葉をどう発するかも含め、負け続けながらもボクシングにしがみついてしまう人間の悲哀を体現するにはやっぱりボクシングしかなかった」と、撮影の1年前からトレーニングを始めた。元日本ランク1位という設定を重視。実戦的なスパーリングに多くの時間を費やし、クランクイン直前にはプロテストも受けた。
「後楽園ホールのリングで初めましての相手と対じした時に、計算だけでは戦えないとはっきり分かりました。原初的な闘争本能が湧き上がってくる感覚、快感を通して、どうして末永がボクシングに病みつきになってしまうのかが見えてきた部分はありました」
クライマックスでは、末永に憧れてボクシングを始めた大村龍太(北村匠海)との壮絶な戦いに挑む。後楽園ホールの客席には多くのエキストラも動員され「観客が自然発生的に興奮している。見る側もやる側も血がたぎる、共犯関係のようなボクシングのエネルギーを感じました」と満足げに振り返る。
5歳からダンスを始め、10歳からは演劇の舞台にも立って表現の可能性を追求してきた。映画に携わることも「凄く至福な時間」という。その上で「表現世界を隔てているわけではなく、全ての場所に身を置きたいわがままな欲望があるので本当に体が足りない。それでも、映画であれ、ほかのものであれ、真摯(しんし)に関わっていくということを肝に銘じなければならないと改めて思います」とさらなる意欲を見せた。(鈴木 元)