「ガロ」で見つけた白土三平さんの貴重な対談記事
2021年11月10日 15:08
芸能
「ガロ」が創刊30周年を迎えるにあたって東北放送(本社・仙台)のラジオ番組が企画して実現した対談だ。時は94年3月10日。場所は千葉県富津市の白土さんの自宅。2人が顔を合わせるのも15年ぶりだったという。
貸本漫画時代の話から「ガロ」の創刊に至る経緯や、親交のあった漫画家たちとのエピソードなど、貴重な話が満載。ごく一部を抜粋させてもらおう。
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白土 そういえば…矢口高雄、うん、あれも「ガロ」が最初でしょ。
長井 そう、あの人感心だよね。
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白土 永島(慎二)さんだって手塚(治虫)さんだって苦労してたんだもの、最初は。
長井 水木(しげる)さんなんかもひどかったよ。苦労した。詐欺みたいなのに引っかかっちゃったから、余計だったんだよね。
白土 講談社賞取ったでしょ、水木さんは。「ゲゲゲの鬼太郎」。俺が推薦したんだ、あれは。
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漫画で描いた忍者のように隠とん生活を送り、ほとんど取材の申し込みも受けなかった白土さんだが、そうした頑なな態度を決定的にしたと推察される出来事も2人の会話から明らかになる。
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長井 前に来た時さ、某新聞社の人連れてったろ、俺。それでうあんたに怒られて。
白土 あれは何だっけ。
長井 あの人もよくないよ。絶対に載せないって、そういう約束したからさ、顔見るだけっていうから連れてきたらさ、とんでもねぇんだよな。
白土 どうしてもそうなんだよなぁ。
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この対談は「ガロ」の記念号だったからこそ実現したものに違いない。取材許可が出たものの土壇場でキャンセルされた経験を持つ後輩記者もいる。なかなかの難物として知られたが、ベールに包まれた神秘性がまた白土さんの魅力でもあったのだろう。
ちなみに創刊30周年記念号にはガロシネマ第1回作品となった「オートバイ少女」の特集記事も掲載されている。あがた森魚監督とプロデューサーで青林堂社長(当時)の山中潤氏、ゲストのライター今一生氏が座談会形式で作品を語っている。この司会を務めていたのが「ガロ」で漫画家デビューした久住昌之氏だ。いまやマルチに活躍する才人で、「孤独のグルメ」の原作者としてもおなじみ。そういえば「孤独のグルメ」の漫画を描いていた谷口ジローさんも2017年2月に69歳で鬼籍に入った。本格選集「谷口ジローコレクション」(第1期全10巻)が小学館と双葉社の合同出版で10月から配本が始まっている。