渡辺王将、藤井竜王“奇襲”に91分間長考 「悩ましかった」タイムマネジメント第一人者が苦悶
2022年01月10日 05:30
芸能
「あそこはちょっと悩ましかった。駒はあまりぶつかってないのですが、どうなっているのかがちょっと分からなかったです」
6分考えて昼食休憩に突入。1時間の栄養補給と休息を経て、対局再開後も熟考はさらに続く。「構想が…うーん。ちょっと考えだしたらきりがなくなってしまったというか」。苦笑いを浮かべて振り返る応手△1四歩には、実に91分の時間が投入されていた。
過去6度の王将戦開幕戦では、先手番を5回連続で獲得してきたが、振り駒では第62期第1局(13年1月13日=対佐藤康光王将)以来の後手番となった。先手至上主義者の一面を持つ渡辺にとっては一抹の不安が残る滑り出しも、藤井の選択した相掛かりをいなすように応じていく。テンポ良く指し継がれた午前の棋譜は、むしろ王将のペースにも見えた。それが若き挑戦者による衝撃の一手で様相は突然転換する。
91分の長考は、王将戦7番勝負第1日に限ると、昨年の第2局で記録した105分に続く数字。当時は指し掛け直前で、しかも約1時間のリードを得ていた場面だった。一方でこの日は昼休み前の浅い時間帯。タイムマネジメントでは他の追随を許さない第一人者のはずが、開始から持ち時間を削られたばかりか数度の長考を強いられ、第1日終了時点で29分のビハインドだ。互角の形勢とは裏腹に、得意の戦い方に持ち込めない苦しさは確かにある。
10日の第2日に向け「封じ手次第なので、それにうまく対応できるかどうかというところです」と話し、控えの茶室を後にした。(我満 晴朗)
≪本紙正月紙面で着用の甲冑展示≫対局場の「掛川城二の丸茶室」と平行する「掛川城御殿」には、スポニチ正月版で両者が着用した徳川家康と山内一豊の甲冑(かっちゅう)が展示されており話題を呼んでいる。本企画の衣装協力は、城の麓に店舗を構える「遠州掛川 鎧屋」。店主の重田和義さん(52)は「王将戦は年に一度の大戦。(展示されている甲冑が)“将棋のまち”を標ぼうしている掛川に来てもらうきっかけになればいいですね」と呼びかけた。