渡辺王将 逆襲へ“魔王”の指し回し、今期2度目の相掛かり 難解な構想戦突入
2022年01月30日 05:30
芸能
歴史的名局と高評価を受けた第1局(9、10日=静岡県掛川市)をなぞるような立ち上がり。21手目までは20日前と全く同じ棋譜が刻まれた。22手目で手を変えたのは後手の渡辺。△4二王とした先例を離れ、△9四に端歩を突く。ほぼノータイムの進行は以降、一手一手が重い神経戦へと突入する。
「あまりやったことのない将棋になりましたね」
藤井の29手目▲8六歩を見て30手目△7四歩を指すまで59分。43手目▲1六歩に応じる44手目△6五歩には51分。慎重に長考をかませながら最善手を繰り出し、決して隙を見せない。
地下鉄飛車の構えをぶつけられても、慌てることなく56手目△5五歩(第1図)と、先手の中央上空に手を伸ばす。強烈なけん制球だ。銀2枚の天蓋(てんがい)に守られた自王の両側面には金を配置。最下段は一段飛車で強固にガードされている。そして相手には攻めの焦点を絞らせない。百戦錬磨の王者にふさわしい指し回し。
王将戦では自身初の開幕連敗を喫した渡辺だが、過去のタイトル防衛戦を振り返ると26シリーズ中、なんと防衛成功は21回に上る。勝率に直すと・808。かくも優秀な数字を残している要因については本人いわく「そこ(防衛戦)に逆算して準備しているから」と単純明快だ。いつの世も記録は雄弁。0勝2敗のスコアでも挽回のオーラは漂い続けている。
激戦の薫りがぷんぷん漂う第2日。午前9時の再開時にどんな封じ手が披露されるのか。そしてその後の構想は。「今日(29日)のうちに考えをまとめておきます」と短く結んだ王者は音もなく自室に消えた。
≪封じ手は≫
▼立会人・深浦康市九段 △9六歩。端からの反撃の場所を確立させる狙い。
▼副立会人・戸辺誠七段 △6四銀左。中央に厚みをつくり、▲9九飛に△5一飛などの応酬が考えられる。
▼記録係・斎藤優希三段 △5六歩。5筋にプレッシャーを与えつつ、相手の出方を見る。