最年少5冠いざ王手!藤井竜王 妙手「地下鉄飛車」で3連勝だ「初めてではない気はします」
2022年01月30日 05:30
芸能
「(地下鉄飛車は)初めてではないような気はします」
午後6時の封じ手後、通算313局の記憶をたどり、珍しい戦型選択だったと明かした藤井。着手の瞬間、棋士らが集う控室では「まだ線路しか通ってません。でも、夢があります」。複数の教室で教える副立会人の戸辺誠七段(35)は少年少女を刺激しそうな戦型選択に声を弾ませた。
鉄道ファンで知られる藤井。静岡県掛川市での第1局を制した翌11日は、同市内の天竜浜名湖鉄道の掛川駅を訪れた。駅舎で乗務員用の上着と帽子を借り、王将戦恒例「勝者の記念撮影」を初体験した。「盤面全体で戦いになっている。(開通できるかは)予想しづらいです」。地下鉄飛車の完成を示す▲9九飛は、渡辺からの56手目△5五歩の開戦で一転、不透明に。ただ、「地下鉄飛車に2筋、さらには中央からの攻めもにらんでいます」。戸辺は地下鉄飛車を見せ球とする選択肢を読み解いた。
午後のハイライトが地下鉄飛車なら午前は29手目▲8六歩だった。9枚ある先手の歩で、取られはしても最も動かすことのない歩を進めた。
「(27手目)▲7七金とした後に▲8六歩とするのは手筋。それにならいました」
7六歩を取りにきた26手目△7四飛に▲7七金と応じた。再度8四へ戻った渡辺飛車に▲8六歩は自然な応接というが、「“初手お茶”がはやったように、8六歩ブームが来るかもしれません」と戸辺は解説する。
同じ先手番だった第1局も41手目▲8六歩を指し、注目された。対局開始時、自らの第1手を指す直前にお茶を口に含むルーティンで知られ、戸辺の教室でも第1手の着手前、持参した水筒やペットボトルに手を伸ばす少年少女が増えたという。
最も価値が低く、働く見込みの少ない歩にも活を入れる。地下鉄飛車もそうかもしれない。藤井将棋には既成の価値観を覆すメッセージがちりばめられている。
▽地下鉄飛車 1段目の駒を移動させた上で、初形から1段引いた飛車を2筋から9筋(後手番なら8筋から1筋)に大きく旋回する作戦。1段目を横に大きくスライドさせる様子が「地下鉄」に似ているため名付けられた。相手が振り飛車穴熊などを指した場合に用いられることが多いが、今局の戦型での登場は非常に珍しい。