桐山清澄九段 74歳の現役最年長棋士が引退決定 次局限りで56年間の現役に幕 1000勝まであと4
2022年02月22日 22:27
芸能
「ここまで勉強を続けてこられたことを、ありがたいことだったと思います」
終局後の代表インタビュー。沈黙後の第一声は74歳まで指せた極意を示すような言葉だった。振り駒の結果先手となり、四間飛車を選んだ。美濃囲いに組み上げると伊奈はトーチカ囲い。中盤戦は相手飛車を下段に押し込め、王頭戦から優位に指し進めた。ところが夕食休憩以降の寄せ合いで決めきれずに逆転負け。「夕食休憩では少し指しやすいかと思った。勝負どころで悪い方を選んでしまった。目標の1000勝を達成できなかったことが残念です」。次局、残留決定戦の勝敗にかかわらず、引退となる。
一昨年、3つ目の降級点がついたため順位戦のC級2組からフリークラスへの陥落が決まり、規定により竜王戦のみ出場資格があった。その竜王戦も5組は3期目のため、今期で4組昇級を果たせなければ引退だった。5組では2期まで、6組降級しない限り参加が認められた。
過去2期も負けると降級、つまり引退の土俵際を切り抜けてきた。第33期は井出隼平五段(30)との残留決定戦に千日手指し直しの末に勝利。前期の残留決定戦も上村亘五段(35)に勝利した。親子以上、年下の棋士たちを退けて棋士人生を延長してきた歩みはまさに愛称「いぶし銀」の真骨頂だった。
今期は昨年12月、南芳一九段(58)とのランキング戦に敗れ、昇級者決定戦へ。伊奈戦から6連勝するか、5連勝で止まっても5位決定戦に勝利すれば昇級できた。
棋王1期、棋聖3期。半世紀以上の棋士生活を振り返り「健康でないと長くは続けられない」と語った。棋界を席巻するAI研究にも取り組んだ。「私なりに研究したが、先入観を捨てきれなかった。ついていくのが大変だった」
若手ですら抱く嘆きにこそ、70代の格闘が表れていた。桐山が引退すれば現役最年長は青野照市九段(69)になる。