「カムカム」完結 物語の永遠性

2022年04月08日 08:15

芸能

「カムカム」完結 物語の永遠性
連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」最終回で、大月家の鍋であんこを作る、ひなた(川栄李奈)、安子(森山良子)、るい(深津絵里)(C)NHK Photo By 提供写真
 【牧 元一の孤人焦点】NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」が8日、完結した。
 2月26日にクランクアップした際、制作側は「ネタバレを避けたい」と、出演者の写真などを出さなかったが、最後に撮影していたのは、安子(森山良子)、るい(深津絵里)、ひなた(川栄李奈)が一緒に、あんこを作るなど、3世代が大月家にそろう場面だった。

 演出の安達もじり氏は「3人が並んで、あんこを作るという絵は、うれしくもあり、ちょっとだけ気恥ずかしさもあったが、3人とも、かわいらしく演じてくださった。3人が自然と大月家にいるという感覚を得られたので、そこがいちばん良かった。誰か1人のシーンでクランクアップするのではなく、安子、るい、ひなたの3人のシーンで終われることが何より幸せだったし、3人そろって同じ物語の中にいることをうれしく感じながら撮った」と話す。

 このクランクアップの数日前、初代ヒロイン・安子を演じた上白石萌音が撮影に参加していた。元進駐軍将校のロバート(村雨辰剛)、幼い頃のるい(子役の古川凛)との2場面に臨み、その後に深津、川栄と一緒に撮影した写真が、最終回の最後に映し出されたスリーショットだった。

 安達氏は約1年に及んだ撮影を振り返り「人に優しいドラマであることを心掛けた。ヒロインが3人いるというのは乱暴なチャレンジだったので、なるべく自然に演出し、作り手の存在を意識しないで見てもらえる世界を作りたいと考えていた。撮りながら、近所に住む家族のような距離感で見てもらいたいという気持ちが強くなった」と話す。

 ラストシーンは、ひなた(川栄)がかつての職場の条映太秦映画村を訪れる場面。初恋の相手だったビリー(城田優)との再会は、3世代の100年物語の結末でありながら、さらなる未来を感じさせ、明るい余韻を残した。

 制作統括の堀之内礼二郎氏は「100年の物語を日々15分で描いてきた。企画段階から、100年を共に歩んだらどんな気持ちになるのだろう?と私自身が思っていた。100年たって生き切った気分、年を取った気分になると予想したが、完成した時、体中に力がみなぎり、これからの100年を作るのは自分たちであり、今を大事にしなければいけないのだと思った。みなさんにも『ひなたの道を歩いて行こう』という気分になっていただけたらうれしい」と締めくくった。

 1925年から2025年まで描いたドラマ。初代ヒロインの安子は100歳で存命だ。100年という長い月日が流れても失われないものがある。最終回で、この物語の永遠性を感じた。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。
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