藤井5冠兄弟子がプロ昇格 杉本八段門下2人目・斎藤裕也三段 苦節10年の遅咲き25歳
2022年09月11日 05:30
芸能
苦労人だ。15歳だった12年6月にプロ養成機関の奨励会入り。その3カ月後に入ってきたのが後の史上最年少5冠・藤井だった。「入会した時から自分より全然強い。強すぎて目標にするような存在ではなかったです」。あっという間に奨励会を駆け抜けていった5歳下の天才とは対照的に出世は停滞気味だった。二段昇段後、初段に落ちた経験もある。「その時は相手は小学生とか中学生とか。自分は大学を出た頃で彼らからするとオッサンの年代。あの時が一番恥ずかしく、つらかった」と振り返る。
規定では原則として26歳までに四段昇段を果たさなければ自動的に退会となる。ただ、リーグで勝ち越しを続ければ29歳までプロ入りのチャンスをうかがうことはできるが、25歳の斎藤にとって残り時間は刻々と迫っていた。それでも地道な努力は報われた。「同年代が多く、気が楽だった」という三段リーグは、なんと藤井以来の1期抜け。「彼は彼。自分は自分で自分なりに頑張ろうと」。遅れてきたルーキーはそう言って目をしばたたかせた。
師匠の杉本八段は女流タイトル戦の仕事で鹿児島県滞在中。斎藤は昇段決定直後にメールを送り「返事はまだです」と苦笑していたが、喜びの会見が終了してスマホを確認すると「おめでとう。今忙しいので、また後で」のメッセージが入っていた。斎藤は目尻を下げて喜びをかみしめた。
◇斎藤 裕也(さいとう・ゆうや)1997年(平9)5月29日生まれ、三重県桑名市出身の25歳。将棋は両親から教わり、鈴木大介九段の著作に影響され振り飛車党となる。立命大政策科学部卒。身長1メートル80、体重は「それが話題になるのはちょっと…」と非公表。趣味は動画サイトでポケモンの対戦実況を見ること。
《藤本が現役最年少棋士に》トップ通過の藤本は大阪市の高校2年生。出身は高松市だが、奨励会に集中するため大阪に転居して研さんに努めた。四段昇段については「まだ実感が湧きません。自力昇段の可能性がなかったので、気負わず指せたのがよかった」と初々しい胸中を明かし、現役最年少棋士の肩書には「特に意識していません。プロとして胸を張れる実力はないので」と謙虚だった。