藤井王将「“深”く追求」羽生九段「語呂で“仁”」扇子に揮毫した文字の意図 “世紀の一戦”8日開幕
2023年01月08日 05:10
芸能
真冬の冷気が吹き飛ぶような熱い歓迎の中、防衛を期す藤井王将は普段通りの表情を崩さない。「羽生九段が挑戦者に決まってから王将戦を意識してきた。注目していただけるシリーズになると思っている。期待に応えられるような将棋にしたいです」。紺色のネクタイにはウサギのデザインが躍る。「家族が選んでくれました。今年の干支(えと)ですから」と、さりげない細部も手抜きがない。王者としての余裕かもしれない。
記念扇子には「深」と揮毫(きごう)した。その意図を「持ち時間8時間と長い対局になる。そういった中で自分なりに盤上を深く追究したいという意味です」と説明した。戦う相手は羽生だけではない。究極の目標である「真理の探究」もテーマに掲げるのが今回の番勝負。一手一手が「深」くなるのは自明の理でもある。
7期ぶりの登場となる羽生は、藤井に負けずリラックスしたオーラを身にまとって対局室を検分した。「徐々に(7年前を)思い出しているところ。落ち着いた場所で対局に打ち込める素晴らしい場所ですね」と、感慨深く周囲を見渡す。こちらは記念扇子の揮毫に「仁」を選択。「藤井さんが深なので、語呂がいいかなと。ただ仁は好きな言葉ではあります。皆さんが喜んでいただければいいかなという気持ちで書きました」と語る口調は柔らかい。
その顔つきにわずかな変化があったのは、対戦相手について問われた瞬間。「ずっと安定して結果を残され、特に最近はその強さを増している」と認めはした。なにしろ直接対決は羽生の1勝7敗。今シリーズも劣勢がささやかれる。「ただ棋譜で見ているのと実際に対局してみるのとは印象が変わることがある。明日以降、実際に対局して体感していきたい」。力強い口調は羽生なりのファイティングポーズだ。
さあ夢対決の開始だ。サッカーW杯や野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に負けない興奮がここにある。歴史が書き換わる世紀の一戦を心して見守ろう。