谷川17世名人 藤井王将の最年少名人獲得に「中原16世名人からお預かりした記録を無事にお渡しできた」
2023年06月02日 05:30
芸能
当時の終局後の記者会見。「実力より地位が先行していますので、タイトルは1年預からせていただきます。そして来年の挑戦者に挑戦する気持ちで指したいと思います」と谷川は語った。名人の歴史への思いが「預からせていただく」という表現になった。誇りとしてきた記録を今回藤井に抜かれたが「無事、お渡しできた」と未練はなかった。
「藤井さんに更新してほしい」。藤井が羽生を挑戦者に迎え、4勝2敗で制した本社主催・第72期ALSOK杯王将戦7番勝負。スポニチ本紙で展望と解説を務めた谷川は取材でそう語った。「実力、実績、人気、(棋界の)看板を背負っている」と評価してきた。
王将戦では、第1局から一手損角換わり、相掛かり、雁木(がんぎ)、角換わり腰掛け銀、横歩取り、角換わり早繰り銀と全6局、羽生の戦型選択を受けて立った藤井。直近の対戦相手の棋譜を調べ、傾向と対策を練るより、自ら関心のある戦型や課題局面での対応を掘り下げる研究姿勢も踏まえ、「勝ちたいより強くなりたい、“将棋の真理を追究したい”を貫いてる」と称えていた。
その表れとして挙げてきたのが盤上没我の対局姿勢。最近でこそ、持ち時間の消費ペースに改善が見られるようになったが、序盤から納得いくまで考え抜く姿勢を逆に認めてきた。
7冠達成の記者会見でも「読みの精度にバラツキがある」と自らの課題を指摘した藤井。谷川も「私の経験では強くなればなるほど将棋の大きさ、底の深さが分かって、やはり何も分かってないと分かるところはありました」と語る。AIを研究に取り入れる藤井だが、「それだけで強くなったわけではない。これまで自分の頭で考えてきた蓄積があればこそ」と谷川は分析していた。その境地と強さを誰よりも理解している。
▼日本将棋連盟・佐藤康光会長 このたびは名人位獲得ならびに史上最年少での7冠達成、誠におめでとうございます。防衛を積み重ねながら、挑戦し数を増やしておられる現状は想像を絶します。タイトル全冠制覇も視野に入ってこられたかと思いますが、ますます体調にご留意され、さらなるご活躍を期待いたします。