「どうする家康」築山殿は悪女、酒井忠次「十二ヶ条の訴状」認め…新解釈→“史実に着地”前半ヤマ場も巧み

　嵐の松本潤（39）が主演を務めるNHK大河ドラマ「どうする家康」（日曜後8・00）は今月2日、第25話が放送され、前半最大のクライマックス「築山殿事件」「信康事件」（天正7年、1579年）が描かれた。主人公・徳川家康が愛妻・瀬名と愛息・松平信康を同時に失う人生最大の悲劇。戦のない“慈愛の国”を目指し、信念を貫いた2人の最期に、号泣の視聴者が相次いだ。 　＜※以下、ネタバレ有＞

　「リーガル・ハイ」「コンフィデンスマンJP」シリーズなどのヒット作を生み続ける古沢良太氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ62作目。弱小国・三河の主は、いかにして戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのか。江戸幕府初代将軍を単独主役にした大河は1983年「徳川家康」以来、実に40年ぶり。令和版にアップデートした新たな家康像を描く。古沢氏は大河脚本初挑戦。松本は大河初主演となる。

　第25話は「はるかに遠い夢」。武田四郎勝頼（眞栄田郷敦）が暴いた瀬名（有村架純）と松平信康（細田佳央太）の“慈愛の国”計画。それはやがて、織田信長（岡田准一）の知るところとなる。2人の始末をつけなければ、織田と戦になる。それでも徳川家康（松本潤）は信長の目を欺き、妻子を逃がそうと決意。一方、瀬名は五徳（久保史緒里）に「姑は悪女だ」と訴える信長宛の手紙を書かせ、全責任を負う覚悟。岡崎城を出た信康もまた、逃げ延びることを良しとしない…という展開。

　信長は家康に「おまえの家中で起きたことじゃ。俺は何も指図せん。おまえが自分で決めろ」。瀬名と信康の処分を命令はしていない。

　通説は、徳姫（五徳）が父・織田信長に「十二ヶ条の訴状」を送り、折り合いが悪い義母・築山殿（瀬名）や夫・松平信康の罪状を告発。訴状を届けた酒井忠次が内容を認めたため、信長も厳しい対応を家康に迫った。

　劇中は、瀬名が「五徳や、そなたは信長様へ書状を書きなさい。わたくしと信康の悪行の数々を書き連ねるのです。暴虐で、不埒で、不忠な母子であると」と自らに汚名を着せる形。酒井忠次（左衛門尉）（大森南朋）は安土城の信長と面会し「一つ、築山殿は悪人であり、五徳を日々誹り、信康様との間を不仲にいたし候事」「一つ、信康様、暴虐にして、鷹狩りの帰りに出会いし法師を引きずり殺し候事」と読み上げた。

　家康は“替え玉作戦”を敢行。しかし、瀬名は身代わりの女を逃した。

　二俣城。信康は「お方様は、無事お逃げになりました」という服部半蔵（山田孝之）の嘘を見抜き、自刃した。

　佐久間信盛（立川談春）は、瀬名と信康が自害したことを報告。「これで、徳川殿と我らとの結び付きはより強固なものになりましょう。よかった…よかった」。信長は「よかった？何がよかった？ああ？二度と顔を見せるな」。信長にも情けがあったのか。

　その十数日前、佐鳴湖畔。家康が「死んではならん。生きてくれ」と直々に説得したが、瀬名は“悪辣な妻”と語り継がれることも厭わず自刃。家族だけで静かに暮らしたいという唯一の“はるかに遠い夢”は叶わなかった。家康は最愛の妻の最期を目の当たりにし、慟哭した。

　鳥居元忠（彦右衛門）（音尾琢真）に代わり、瀬名を介錯したのは女大鼠（松本まりか）。突き刺した刀を抜くと、一歩下がり、地べたに額をつけた。

　今作は「築山殿＝悪女」の通説を採らず。それに伴い、かつてない瀬名像＆新解釈の「信康・築山殿事件」を創り上げた。

　SNS上には「凄い面白い解釈の築山事件ラストだった。後世に悪女であると吹聴されることを覚悟している瀬名の台詞があったのも、納得してしまった。自分はこの解釈、好きだな」「五徳の書状も彼女を庇う形で徳川が指示し、それを忠次が認めるという…そこまで着地するのが凄い」「家康公は安寧の世を願って天下統一を成し遂げた。その直接的な動機として築山事件を新解釈。面白い脚本だなと思った」「伝えられている出来事一つ一つの間の余白を丁寧に埋めていって、新解釈の強く愛らしい築山殿を描いてくれました」「どう家の世界観で史実にきちんと着地させてしまう脚本が凄まじい…。もはや本当にこうだったのではとさえ思えてくる」などの声も上がった。

　「金ヶ崎の退き口」（元亀元年、1570年）の“小豆袋の逸話”を阿月（伊東蒼）に擬人化した第14話「金ヶ崎でどうする！」（4月16日）、家康が夏目広次（甲本雅裕）の名前を間違える伏線を回収した第18話「真・三方ヶ原合戦」（5月14日）などに続き、前半最大のヤマ場もドラマとして巧みに展開された。

　9日は第26話「ぶらり富士遊覧」。後半の幕が上がる。