藤井聡太王将 成るか8冠 決戦告げる陣屋太鼓 52年に「陣屋事件」

2023年08月31日 04:45

芸能

藤井聡太王将 成るか8冠 決戦告げる陣屋太鼓 52年に「陣屋事件」
王座戦第1局が行われる「元湯陣屋」 Photo By スポニチ
 藤井聡太王将(21)=竜王、名人、王位、叡王、棋王、棋聖含む7冠=が永瀬拓矢王座(30)に挑む第71期王座戦5番勝負第1局は31日、神奈川県秦野市「元湯陣屋」で指される。30日は両者が対局場検分と記者会見に臨み、意気込みを語った。藤井は最短3連勝で第3局がある9月27日に決まる史上初の全8冠独占、永瀬には連続5期獲得による名誉王座が懸かるシリーズ。対局開始前の振り駒によって先手後手を決め、夜決着予定だ。
 注目のシリーズの初戦の舞台となる「元湯陣屋」。4代目女将・宮崎知子さん(45)は「いつも以上に気合を入れてお迎えします」と意気込んでいる。

 陣屋は1918年創業の老舗高級旅館。昭和初期から将棋のタイトル戦ではおなじみの“聖地”で、囲碁を含めれば300以上の対局が行われてきた。

 将棋史上最も有名な事件の一つ「陣屋事件」の舞台となった地。第1期王将戦(52年)第6局の対局前日、升田幸三八段(当時)は陣屋を訪れたものの「ベルが鳴らず、誰も出てこないのは非礼」と憤慨して立ち去ったとされる。

 「事件を受けて、お客さんが来た時に大きな音で知らせるように太鼓ができたと聞いています」と宮崎さんは語る。敷地入り口に置かれ、客の出入りのたびに従業員が叩く「陣屋太鼓」の大きな音が歴史を感じさせる。

 藤井が陣屋で対局するのは今回が初めて。宮崎さんは「開催地に選ばれたのは挑戦者が決まる前で、挑戦者が絞られていくうちにソワソワしてました。初めてお目にかかれてうれしい」と笑顔で話した。藤井の挑戦を受ける永瀬にとっても永世位の「名誉王座」が懸かった大事なシリーズ。注目度も高く、取材依頼もこれまでのタイトル戦に比べて2倍以上きているという。

 宮崎さんは「お二人にとって意味合いが深い対局。悔いの残らない対局ができるようにおもてなしをしたい」と表情を引き締めた。そして「陣屋としても貴重な体験。歴代積み重ねてきたことを踏まえて、今回の対局を後世に引き継いでいきたい」と語った。

 ≪宮崎駿氏も登った「トトロの木」≫庭園内には樹齢160年は超え、ビル5階ほどの高さにもなる大きなクスノキがあり「トトロの木」として有名だ。映画監督の宮崎駿氏(82)が先代女将といとこで、幼少期に陣屋で約2年間暮らしたことがあったといい、ジブリファンの聖地となっている。トトロの木は、映画「となりのトトロ」に登場するトトロの森もクスノキであることから、ファンがそう呼び始めたという。宮崎さんによると「駿さんはこの木を登ったりして遊んでいたみたいです。あまり得意ではなかったと聞きました」と語った。

 ≪名物「陣屋カレー」≫「陣屋カレー」も名物の一つ。日本料理を提供する旅館だが、米長邦雄永世棋聖の「カレーを食べたい」との要望で将棋のタイトル戦のために作られたとされる。大量のタマネギなど多くの野菜を溶けるまで煮込み、隠し味には和風ダシを使用。宮崎さんによると少し辛口だが、辛いものが苦手な渡辺明九段(39)には辛さ控えめで提供したという。普段はルームサービス(税込み2750円)でのみ提供。陣屋カレー目当ての宿泊客も多いといい、今回の対局で注文があるかにも注目だ。

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