中森明菜 「完璧主義」の軌跡 BS─TBS永久保存特番第2弾

2023年09月01日 08:10

芸能

中森明菜 「完璧主義」の軌跡 BS─TBS永久保存特番第2弾
中森明菜が歌う一場面(C)BS-TBS Photo By 提供写真
 【牧 元一の孤人焦点】9年間に歌手として大きく成長する様が如実に表れている。番組で流れる映像は、1982年のデビュー曲「スローモーション」から91年の「二人静─『天河伝説殺人事件』より」まで。「スローモーション」の歌い方は直線的で朗らかだが、「二人静」は細やかで愁いを帯びている。外見も少女らしい丸みから大人の女性らしい鋭さ、艶やかさへの変化がうかがえる。何より、全曲を通して感じるのは、やはり、尋常ではない歌唱力だ。ファンだけではなく当時のことを全く知らない人も見て聴いて楽しめるに違いない。
 BS─TBSの特別番組「中森明菜 女神の熱唱2 ザ・ベストテン不滅の歌声」(9月5日後9・00~10・54)。同局が昨年11月4日に放送した明菜特番の第2弾だ。

 制作プロデューサーの落合芳行氏はこう話す。

 「第1弾は放送中からSNSで反響があってトレンド入りしました。特に、明菜さんを知らない若い世代の人たちが『歌がうまい』『かわいい』と素朴な感想を投稿しているのが目を引きました。初めて見た人たちにこれだけ驚かれるアーティストはなかなかいません。リアクションの大きさを考えると、少なくとももう一回は特番を作った方がいいのではないかと考えました」

 番組で流れる楽曲は計20曲。「スローモーション」以外はTBS「ザ・ベストテン」の映像で、「二人静」は「今夜だけ!御本家復活 ザ・ベストテンスペシャル」(91年10月放送)のものだ。

 「明菜さんはザ・ベストテンに200回以上出演していて、1曲ごとに何通りも映像があります。そこから良い素材を厳選しました。あの番組の醍醐味のひとつが豪華なスタジオセットでした。私は当時、横から見ていましたが、チーフディレクター的な存在だった山田修爾さんを中心に番組スタッフが明菜さんを少しでもよく見せよう、彼女のパフォーマンスを少しでもよく引き出そうと、毎回朝まで会議して練り上げ、手を替え品を替えてセットを作り上げていました。その成果が映像に表れているので、それをみなさんにお見せしたいと思いました。今回の特番は明菜さんのベストヒットのザ・ベストテン・ベストパフォーマンス集です」

 曲の合間に当時のレコード会社、ザ・ベストテンのディレクターのインタビュー映像が流れる。そのうちの1人が「歌に関しては完璧主義だと思います」と証言するのが印象的だ。「少女A」で番組側が明菜に向かってクモの巣が下りてくようなる演出を用意した際、まだデビューして間もなかった明菜がきっぱりと「歌いにくいです」とスタッフに注文を付けたというエピソードも興味深い。

 「ザ・ベストテンはファンの人たちの支持に支えられて出演する番組です。明菜さんはその使命感に突き動かされていたのだと思います。歌うならちゃんと歌いたい。やるなら徹底的にやりたい。だから『歌いにくい』と怒ることもある。それはわがままではなく完璧主義だから出たものでしょう。だからザ・ベストテンの手だれの人たちも、われわれもしっかりやらなければいけないと考える。そこに切磋琢磨があります。明菜さんはデビューした頃からアーティストとして高みを目指していたのだと思います」

 今回もファンにとって永久保存版になるであろうこの特番には「完璧主義」の軌跡が映っている。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。
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