井浦新 主演映画「福田村事件」観客の涙に手応え「心にちゃんと残る映画になってると実感」
2023年09月03日 14:20
芸能
オウム真理教のドキュメンタリー映画「A」で知られる森達也監督(67)は01年頃に「福田村事件」を知り「ドキュメンタリーとしては無理」と自身初めて本格的な劇映画としてタクトを振るった。当初から主演を井浦に。井浦については「セリフも全部頭に入れてきたから、ここはワンカットですよねという気迫があるけど、ノーブルさがある」と絶賛し、隣にいた井浦も大照れだった。
井浦もオファーがあった際には事件のことを知らなかったが「俳優として森監督が初めて撮られる劇映画に参加させていただくのは光栄なこと」と快諾。主演として、また出演者らを束ねる“座長”として「自分にプレッシャーをかけて、無事に撮り終えるという責任を課して、後ろから監督の映画作りを完成させるという強い思いがあった」と芝居のみならず、撮影終了後もキャスト、スタッフを気遣い、労い、バックアップしただけに、思い入れは人一番強いようだ。
関東大震災からの流言から起こった虐殺事件というテーマ。SNSによる風評被害や誹謗(ひぼう)中傷、同調圧力など、100年前に起こったことを今の時代に重ねる。森監督は「今はネットが主になってメディア環境が違うが、メディアのリテラシーが進化してるとは思えない。メディアの発達があまりにも急激すぎて。メディアに振り回されている。当時のメディアは新聞しかない時代だったが、その頃と同じとは言わないが、近いモノがある感じがする」と語った。
森監督は、井浦の他にも永山瑛太(40)、東出昌大(35)ら個性派の俳優陣が出演要請に応じたことには「ものすごく物議をかもす映画になっちゃうかもしれないのに、中止になって傷ついてしまうかも知れないのに、ほとんどの方が二つ返事でOKしてくれた。びっくりしました」とし、さらに「俳優の中にもこういう映画を日本でももっと作らなきゃダメだという思いがあるのかもという気がしました」と社会問題を積極的に取り上げる映画界の到来を願っていた。
映画は「第28回釜山国際映画祭」(英題・SEPTEMBER 1923)のニューカレンツ(コンペティション)部門へ出品される。