羽生九段 震えた 耐えて開幕戦白星 王将戦挑戦者決定リーグで近藤誠也七段に勝利

2023年09月21日 05:10

芸能

羽生九段 震えた 耐えて開幕戦白星 王将戦挑戦者決定リーグで近藤誠也七段に勝利
王将戦挑戦者決定リーグ開幕局で勝った羽生九段は感想戦で対局を振り返る(撮影・大城 有生希) Photo By スポニチ
 将棋の第73期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)挑戦者決定リーグは20日、東京都渋谷区の将棋会館で開幕局となる羽生善治九段(52)―近藤誠也七段(27)戦を行い、先手の羽生が113手で勝利した。前期挑戦者の羽生は2期連続挑戦に向け好スタート。6月の日本将棋連盟会長就任後、王将戦では初勝利にもなった。
 ブルブルと右手が細かく振動していた。羽生の93手目▲3三金。後手王への「詰めろ」をかけた瞬間だ。「相当怖かったんですが、しょうがないかと思い開き直った。何があってもおかしくないので」。その直後から猛攻を浴び、自王の逃避行を強いられたが、ギリギリのところで耐えていると読み切り、今度は何度もうなずく。「(自王が)詰まないのは幸運でした」と安堵(あんど)の息を吐いた。

 先手番で選択した戦型は互いの飛車先の歩を突き合う「相掛かり」。序盤で早々と先例から離れ、超難解なねじり合いになる傾向が強い好戦的な布陣だ。実際のところ「昼休み以降、まとめ方が分からなくなって…」と、眉間にしわを寄せる場面が多かった本譜。飛車と角を交換したものの、その角を利用されて左辺から崩され、馬2枚をつくられる展開は「かなり手厚いので、ちょっと悪いんじゃないか」と明かす。

 悲観する中でも、さすがに反撃の機会はうかがっていた。2枚目の飛車を59手目に2一へと放ち、近藤の王様を下部から攻め立てる。左辺の守備に手をかけた後に1一の香を獲得すると同時に竜を実現させたのは大きかった。結局この竜1枚が強力な拠点となり、気がつけば中盤の43手目▲7四歩も待ち伏せ駒として十分な役割を果たしている。近藤が攻めに手間取る隙を確実に捉え、開幕勝利に結びつけた。

 連盟会長に就任したのが6月9日。以降、公務と対局の「二刀流」が義務となった。「忙しい方がメリハリをつけられますから」と言いながらも、実際は深夜に対局を終えてから段位の免状に署名するなど、研究に投入する時間は制約されている。それでも限られた時間を有効に使うタイムマネジメントは1996年の全7冠制覇時代から手中にしており、勝敗への影響は最小限に抑えられている。

(研究時間に制約/) 昨期は自身2度目の全勝で藤井王将への挑戦権を獲得した。2勝4敗で敗退した借りを返すには、また今期も勝ち進むしかない。「いいスタートを切れたので、これを機に頑張りたい」と、リーグ最年長の羽生は静かな決意を強く示した。 (我満 晴朗)

 ▽挑戦者決定リーグ 前期リーグ成績上位のシード棋士4人と1、2次予選を勝ち上がった3人の計7人による総当たり戦。優勝者が7番勝負(例年1~3月)に出場する。複数棋士が相星で並んだ場合は前年成績に基づく序列上位の2者によるプレーオフを行う。成績下位の3者はリーグから陥落し、翌期は2次予選に回る。会場は東西の将棋会館で、開局は午前10時。持ち時間は秒単位実測のチェスクロック使用で各4時間。
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